パーム油認証機関RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)は6月27日、食品世界大手スイスのネスレのRSPO会員資格を同日停止したと発表した。これによりネスレ・グループの工場に付与されていたRSPO認証も即時停止された。RSPOはネスレが会員企業の義務である年次レポート(ACOPレポート)の提出を怠ったためと説明。これに対しネスレは、追求するレベルでRSPOとの見解の相違があり、今後協議を進めていきたい考えを示した。
RSPOの会員企業に課せられている行動規範(Code of Conduct for Members 2017)では、会員企業に対し前年の活動内容と今後の改善計画スケジュールを示した年次レポート(ACOPレポート)の提出が義務化されている。RSPOによると、ネスレは2016年にACOPレポートを提出せず、2017年に提出したACOPレポートでは明確な改善計画スケジュールを盛り込まなかったという。RSPOはネスレと協議し、ACOPに具体的に時期を定めた改善計画を盛り込むよう要求したが、ネスレはそれを拒否したという。またネスレは、会員料2,000米ドルの支払いも遅延しており、これもRSPO憲章に違反するという。
今回の措置により、ネスレ・グループがRSPO認証を取得したNestlé AustraliaとCPUK Bromboroughの工場でRSPO認証の資格が停止。今後30日間猶予期間が与えられるが、30日以内に停止処分が解けなければ、正式にRSPO資格が失効する。
これに対しネスレは、ネスレがサプライヤーに対して要求している調達基準はRSPO認証の基準より高く、RSPOとの間では見解の相違があると表明。ネスレの基準では、泥炭地や炭素密度の高い地域での保護も強く打ち出しており、同内容は現地での社会紛争を防ぐために重要だとした。一方で、ネスレは、RSPO認証の取得から、サプライヤーのトレーサビリティを高め同社のサステナビリティ調達基準遵守率100%へと目標をシフトしており、RSPOが会員企業に求める「パーム油のRSPO認証取得率100%」に向けたスケジュール策定は難しいとの見方を示した。さらに、RSPOの制度の一つ、証書取引制度「GreenPalm」についても課題感を匂わせた。
ネスレはまた、2016年にACPOレポートを提出しなかった理由については、人事異動の混乱により提出が期日に間に合わなかっただけと説明した。
ネスレは、今回のRSPOの措置を尊重するとし、今後も協議を続けると発表。RSPOと目指す方向性が異なるにもかかわらず再度会員資格を取り戻する努力をする理由については、「RSPOは持続可能なパーム油に向け業界を推進する重要な役割を果たしているため」と説明。RSPOに対し、同社のスタンスに対する理解を求めていくと伝えた。
【参照ページ】SUSPENSION OF NESTLÉ S.A. (RSPO MEMBERSHIP NO. 4-0055-09-000-00) DUE TO BREACH OF THE CODE OF CONDUCT FOR MEMBERS OF THE RSPO
【参照ページ】Why has the Roundtable on Sustainable Palm Oil (RSPO) suspended Nestlé’s membership?
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