国連責任投資原則(PRI)は6月13日、信用リスク評価におけるESG考慮に関する議論についての第2弾レポート「Shifting perceptions: ESG, credit risk and ratings – part 2: exploring the disconnects」を発表した。今回のレポートは、2017年に発表された第1弾レポートに続くもの。第1弾レポートでは、信用リスク評価で十分にESGが考慮されていないことを指摘。その後、あるべき姿についての議論が続けられていた。
【参考】【国際】PRI、格付会社と機関投資家の信用リスク評価とESGの関係を分析したレポート発表(2017年7月21日)
議論に参加している格付会社は、ムーディーズ、S&Pグローバル・レーティングの他、中国の格付け会社である東方金誠国際信用評估(Golden Credit Rating International)、大公国際資信評估(China Chengxin Credit Management)、Dagong Global Credit Ratings Group)、中誠信国際信用評估(China Chengxin International Credit Rating)、中国誠信信用管理(ブラジルのLiberum Ratings、フランスのBeyond Ratings、ドイツのScope Ratings、ドイツのRating-Agentur Expert、マレーシアのRAM Ratings、スペインのAxesor Rating、イタリアのマイクロファイナンス格付Microfinanza Rating、フランスのマイクロファイナンス格付Beyond Ratings、日本の格付投資情報センター(R&I)と日本格付研究所(JCR)。また、議論には、PRI署名機関の機関投資家130機関以上も参加している。
今回のレポートでは、格付会社と債券投資機関投資家の双方が直面している4つの共通課題を紹介している。まず、信用リスクにおける重大なESGとは何かという点。信用格付においてガバナンスを考慮することは一般的だが、環境・社会要素をどのように取り込むかは共通の見解が得られなかった。議論の中では、環境・社会のパフォーマンスを見ることが、不適切な経営の先行指標となるかもしれないという意見も出た。
また、第1弾でも指摘されたようにリスクを捉えるタイムホライゾンについても課題がある。ESGリスクに影響を与える長期の構造的トレンドは何か、ESG関連事項が重要性を帯びる可能性及びタイミング、それらのESG関連事項の再発可能性、ESGリスクのインパクトと破壊的テクノロジーに対応するためのM&A等による事業ポートフォリオの入れ替え対応力等については重要アジェンダと認識された。
続いて、信用格付にESGリスクを取り組んでいく格付会社の組織的対応力の問題。ESGリスクに関心を寄せる格付会社は増えているものの、既存の考え方を超えていくにはまだまだ時間がかかり、取り組もうとするスタッフをモチベートさせていく方策についても検討が必要となっている。
最後に、格付会社の方法論の透明性の問題。機関投資家の多くは、格付会社の評価手法にブラックボックス化を感じていた。対案としては、従来の信用格付とは別にESGを組み込んだ信用格付を提案する意見もあった。一方、一本建ての信用格付にESG評価を織り込むモデルについては難易度が高いという声が上がった。
PRIは、第2弾レポートについての意見を広く求めている。第3弾のレポートは今年後半を予定しており、国債と社債のESGリスクの違いや、今回の課題についてのソリューションについて発表する。
【参照ページ】The PRI publishes its second report on ESG in credit risk analysis and ratings
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