ワシントン条約(CITES)事務局は5月22日、絶滅危惧IA類に指定されているヨーロッパウナギとその他のウナギ種の国際取引に関する報告書を発表した。日本が、国際取引が禁止されているヨーロッパウナギの主要輸入国となっており、希少性が心配されるニホンウナギの稚魚も海外から密輸されている実態が報告された。
ヨーロッパウナギは、ワシントン条約の附属書IIに掲載されており、輸出国政府の許可のない国際取引が禁止されている。今回の報告書では、2010年にEUがヨーロッパウナギの輸出入を禁止して以降、域内での取引は激減したと確認。一方、EU向けに輸出をしていたモロッコやチュニジア産のヨーロッパウナギは、近年アジア諸国に輸出されていることを突き止め、とりわけ中国に大規模に輸出されていると報告。さらに中国に輸出されたヨーロッパウナギの大半が、日本に再輸出され、日本が主要輸入国だと分析した。
同報告書によると、日本を始めとする東アジア諸国でヨーロッパウナギの輸入が増えている理由は、ニホンウナギの稚魚の減少と関係している。ニホンウナギの希少性が高まり、各国でも保護規制が導入されたことで、東アジア諸国では在来種であるニホンウナギに変わり、ヨーロッパウナギの稚魚を入手しようとする動きが活発化。EUが2010年に輸出入を禁止したことで、EU域外のヨーロッパウナギを獲得する動きがさらに増えているという。中国や台湾、韓国でもヨーロッパウナギを輸入した養殖が多いが、その多くは日本への輸出向け。
同報告書では、まだ国際取引が禁止されていないニホンウナギ(絶滅危惧IB種に指定)についても、日本への違法輸入が多いことを指摘した。中国、韓国、台湾で養殖されたニホンウナギの稚魚(シラスウナギ)は香港を経由して日本に密輸されており、日本税関によると2008年から2017年までで密輸発覚量が7.4t。最終的に報告書は、日本でシラスウナギ漁獲量のうち、43%から63%は違法または未報告のものだと推定。2017年度でも57%と半数以上を占める。
今回の報告を受け、世界自然保護基金(WWF)ジャパンは6月1日、ニホンウナギの国際的な資源管理の強化および国内シラスウナギ採捕・取引の管理強化を求める要望書を農林水産大臣に提出した。WWFは、シラスウナギの池入れ量規制が緩いとして、上限の引き下げも訴えている。
ワシントン条約の締約国会議が2019年5月にスリランカに開催されるが、ニホンウナギの国際取引が禁止される可能性があるとの観測も出ている。
【報告書】Implementation of the CITES Appendix II listing of European Eel Anguilla anguilla
【報告書】Status of non-CITES listed anguillid eels
【参照ページ】WWFジャパン、農林水産大臣宛に要望書を提出
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