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【国際】NASAの観測衛星データ、地球の淡水量変化の規模および要因の解明に大きな成果

 5月17日発行の英科学誌ネイチャーに、米航空宇宙局(NASA)ゴダード宇宙飛行センターのマット・ロデル研究者らチームが書いた地球の陸地における淡水貯留量の変化に関する論文「Emerging trends in global freshwater availability」が掲載された。同論文は、NASAとドイツ航空宇宙センター(DLR)が共同で人工衛星による地球重力場の観測を行うミッション「GRACE(Gravity Recovery And Climate Experiment)」の一環で、2002年から2016年に世界34地域を対象とした調査を分析したもの。最も注目の結果は、乾燥地帯も湿地帯も各々その度合いを高めていることだという。

 淡水は雨、雪、氷等に含まれ、土壌、地下水、川、湖沼等に貯留されている。今回の観測の主な目標は、地球上の淡水貯留の変化の規模とその原因を把握する。とりわけエルニーニョやラニーニャに関する湿潤期と乾燥期のような通常の気候サイクルと、温暖化による気候変動、そして帯水層から地下水を汲み上げるような人間行為の影響とを判別するに重きが置かれた。

 調査では、NASAのGlobal Precipitation Climatology Project(GPCP)による降水量のデータや、人工衛星ランドサットによる地質調査の画像と共に、灌漑地図、農業、鉱業、貯水池の運営等、人々の活動に関する資料を活用した。多様なデータを組み合わせることで、今回初めて、地球規模の淡水の利用可能性の変化について総合的な理解が可能となった。
 
 淡水は飲料や農業用として最も重要な地下資源の一つ。その増加や減少は重大な影響を及ぼす。今回の観測によると、貯留量が比較的安定している地域と増加や減少が見られる地域があるという。乾燥地帯で地下水が枯渇しているホットスポットが見られる一方、湿地帯の中で高緯度および熱帯に位置する地域では淡水貯留量の増加が見られた。しかし温暖化により氷床からの淡水の融解が海面上昇に影響を及ぼすように、要因が特定できる変化がある一方で特定できない変化もあるという。

 GRACEの衛星観測による推計に加え、降水量、農業、地下水の汲上げに関する情報をもとに、干ばつや雨季のサイクルにも配慮した分析が行われた。2007年から2015年までカリフォルニア州セントラルバレーで見られた深刻な地下水の枯渇は、降雨と降雪による地下水の補充が減少したことと、持続不可能な農業用地下水の汲上げ増加との「負の相乗効果」だった可能性が高い。

 サウジアラビアで見られる淡水の下降傾向も、農業による影響を反映している。2002年から2016年にかけて地下水は年間6.1Gt減少した。ランドサット衛星の画像からは、1987年から現在まで乾燥地帯で灌漑農業が爆発的に拡大していることがわかった。

 さらに同論文では、人間の直接的行為に関係しないような大規模かつ長期にわたる淡水貯留の傾向も明らかにした。例えば、北ボツワナの野生動物の貴重な水源であるザンベジ盆地とオカバンゴデルタでは、2002年から2016年にかけて年間29Mt貯水量が増加した。それ以前には少なくとも20年間の乾期が続いており、降水量の自然変動により起こったのではないかと推測されている。

 しかし自然変動と人間の行為との組み合わせが複雑なシナリオに繋がる場合もある。中国北西部の新疆ウイグル自治区は、西側はカザフスタン、南側はタクラマカン砂漠に隣接しており、中央に天山山脈がある。今世紀初めの数十年、この地区では年間5.5Gtの陸上貯水量が減少している。ロデル氏らは、複数の要因を組み合わせ原因を解明したところ、降水量の減少が原因ではないことが判明した。この地域では農耕地の灌漑や砂漠の表面からの河川水の蒸発により貯水量が枯渇し、温暖化による氷床の融解や炭鉱から汲み上げられた地下水の水量を上回っていたことがわかった。

 今回の分析では、地球の陸上における貯水量に関して新たに解明された点が多かったが、さらに踏み込んだ観測・調査が必要であることも明らかになった。そのため、引き続きGRACE Follow-Onというドイツ地球科学研究センター(GFZ)との共同衛生ミッションがカリフォルニア州にあるヴァンデンバーグ空軍基地で打ち上げの準備を進めている。

【参照ページ】NASA Satellites Reveal Major Shifts in Global Freshwater
【論文】Emerging trends in global freshwater availability

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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