経済産業省は5月2日、M&A取引に関し、当局からの承認前にM&A取引を実行することや、M&A取引実行前に無制限に競争機微情報を当事者間で交換してしまう規制違反「ガン・ジャンピング」行為の調査報告書をまとめた。日本だけでなく、米国、EU、中国、ドイツ、フランス、オランダ、韓国、インド、デンマーク、ブラジル、メキシコの規制概要も整理した。
一般的に競争法の世界では、(1)当局のOK(クリアランス)が出る前にM&A取引等を実行してしまうこと、(2)M&A取引を実行する前に「競争機微情報」を交換してしまうことが「ガン・ジャンピング」と呼ばれ、規制違反となる。競争機微情報には、価格情報や入札情報、マーケティング戦略、生産・販売・売上情報、顧客情報等が含まれ、とりわけ同業界内でM&Aを実施する場合には、市場の公正な競争を歪める行為とみなされる。ガン・ジャンピングという名称の由来は、徒競走等でガン(号令)が鳴る前に、ジャンプスタートを切る行為に例えたことから。昨今、ガン・ジャンピング行為が国際的に発生しており、経済産業省は今回、考え方をまとめた。
同報告書では、国際的なガン・ジャンピングの種類として4類型があると分析した。
類型1
事前届出制度に基づく届出が適時に行われなかったことによる届出・待機義務違反(手続法違反)
類型2
複雑なスキームを使ったM&A取引に関する届出・待機義務違反(手続法違反)
類型3
クリアランス取得前に、M&A取引の対象会社に対する支配が買主に移転したことや対象会社に対する影響力の行使が発生したことによる届出・待機義務違反(手続法違反) ※当事会社が競争事業者である場合、競争事業者の間で情報交換が行われることによって同時にカルテル規制違反(類型④)にもなりうる。
類型4
M&A取引の過程における競争事業者である当事会社間の行き過ぎた情報交換に伴うカルテル規制違反(実体法違反)
日本で「ガン・ジャンピング」が疑われ調査中の案件として、キヤノンと東芝間で契約された東芝メディカルM&A事案があり、類型2に当たるかどうかが調査されている。
経済産業省は、「ガン・ジャンピングへの執行は強化されつつあり、巨額の制裁金が課された事例も存在」すると警告している。
【参照ページ】海外ガン・ジャンピング規制についての実態と対策調査報告書を作成しました
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