国連責任投資原則(PRI)、国連環境計画金融イニシアチブ(UNEP FI)、Generation Foundationは3月28日、中央財経大学グリーンファイナンス国際研究院と共同で、中国でのESG投資の提言をまとめた報告書「Invester Duties and ESG Integration in China」を公表した。同報告書は、2016年1月にPRI、UNEP FI、Generation Foundationが発足した3年間のプロジェクト「Fiduciary Duty in the 21st century」の成果の1つ。中国の投資家や政策立案者に向け、中国でのフィデューシャリー・デューティーの概念解釈とESGファクター考慮のためのロードマップを提供した。
中国では機関投資家に関する法規制は複数の法律により複雑に管理されている。まず規制当局として、中国人民銀行(PBOC)、中国証券監督管理委員会(CSRC)、中国銀行監督管理委員会(CBRC)、中国保険監督管理委員会(CIRC)の4部門が存在。独立系の運用会社はCSRCが、銀行系の運用会社はCBRCが、保険会社系の運用会社はCIRCが担当し、法規制体系も分立している。2018年3月にはCBRCとCIRCは統合し中国銀行保険管理監督委員会となり多少はまとまった。またアセットオーナーに関しても、公的年金の全国社会保障基金(NSSF)や他の年金基金は人力資源社会保障部と財務部が、保険会社はCIRCが、政府系投資ファンドは国務院と中国人民銀行が所管している。
中国は2016年以降、環境保護と経済成長の両立を掲げた動きを強め、杭州で開催されたG20サミットでは、グリーンファイナンスを持続可能な発展のためのキーファクターと位置付けた。今では、政府の一帯一路構想の中でグリーンファイナンスは中心的位置を占めるようになっている。また、国連、PRI、経済協力開発機構(OECD)の考えを反映し、環境に加えて社会とガバナンスの取り組みも強めてきている。各規制当局の法規制も、基本的な善管注意義務や忠実義務、受益者保護、リスク情報開示については定めているが、中国政府のグリーンファイナンスシステム構築のためのガイドライン(GEGFS)や生態文明(エコ文明)に紐づく明確な法規制は導入されていない。投資時間軸についても短期思考が見られる。
これら課題を克服するため、同ロードマップでは、中国で、ESG投資とグリーンエコノミーを推進するための5つを提言。「機関投資家がグリーンファイナンスシステムを確立するためのガイダンスの発行」「年金基金の投資にESG要素を組み入れる規制の導入」「企業のESG活動報告・国際的な基準との整合性・効果測定のフレームワーク整備」「市場の理解をサポートする投資プロダクトやツールの普及」「投資家の教育とESG投資リサーチのサポート」がその内容。
実際に中国では、中国証券監督管理委員会が2020年までに環境取り組み情報公開の義務化を目指して動いている。業界団体の中国資産運用協会(AMAC)も、ESGインテグレーションを推進する具体的な計画を定めた。投資家サイドでも、中国工商銀行(ICBC)を含む中国の6つの金融機関が「UK-China TCFDパイロット・プロジェクト」に参加し、環境情報開示のフレームワーク策定をリードしている。
UNEP FIとPRIのMargarita Pirovskaシニアコンサルタントは、中国の近年の取り組みの背景には、仏エネルギー転換法173条等の欧州の先行する動きがあると説明。英国でも、グリーンファイナンスタスクフォースがESGファクターを受託者責任に組み入れるべきだと提案し、EUの「持続可能な金融についてのハイレベル専門家グループ」の提案にもなり、EUの持続可能な金融のアクションプランに採択されている。
【参照ページ】BLOG: UNEP FI’S MARGARITA PIROVSKA DISCUSSES INVESTOR DUTIES AND ESG INTEGRATION IN CHINA
【参照ページ】Investor duties and ESG integration in China
【レポート】INVESTOR DUTIES AND ESG INTEGRATION IN CHINA
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