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【アメリカ】J&J、ベビーパウダーに含まれるタルクを巡る裁判で敗訴。同社側は否認

 医薬品世界大手米ジョンソン・エンド・ジョンソンは4月5日、同社製ベビーパウダーのタルクにアスベストが含まれており、中皮細胞から発生するガンの一種、中皮腫を誘発したとする告訴を巡る米ニュージャージー州ミドルセックス郡の上級裁判で敗訴した。原告に3,000万米ドル、配偶者に700万米ドル、合計3,700万米ドル(約40億円)の補償的損害賠償金の支払いを命じる評決を陪審員が下した。これに対し、ジョンソン・エンド・ジョンソンは、原告側の主張を否定し、同社のベビーパウダーにはアスベストは含まれておらず、ガンを引き起こすはずはないと反論している。

 タルクは、滑石という鉱物を粉砕したもので、ファンデーションやメイク用品にも多く使用されている天然成分。1980年代にアスベストを含有するタルクが発見されたことを機に関心を持つ消費者が増えてきている。日本では、厚生労働省労働基準局安全衛生部が2006年10月16日に「石綿を含有する粉状のタルクの製造、輸入、譲渡、提供又は使用の禁止の徹底について」とする通達を発し、石綿をその重量の0.1%を超えて含有する粉状のタルクを使用しないよう関係団体に指示。その後の実態把握調査でも、アスベストを含むタルク製造は確認されなかった。

 今回の裁判は、ニュージャージ州在住のStephen Lanzo氏が、1972年以来、長年にわたり同社製ベビーパウダーを使用し粉末を吸い込んだ結果、中皮腫を発症した訴えたもの。ジョンソン・エンド・ジョンソンの70%を、タルクのサプライヤーである仏イメリスの米国法人が30%が担うとされている。さらに同裁判所は4月11日、ジョンソン・エンド・ジョンソンに5,500万米ドル、イメリスに2,500万ドル、合計8,000万ドル(約85億円)の懲罰的損害賠償金を命じ、Lanzo氏への賠償金は総額で1億1,700万米ドルとなった。一方、イメリスも同社製のタルクは安全であり、Lanzo氏のアスベストは別の物質から取り込まれたことが明らかだと主張。再審を要求する予定だとする声明文を発表した。

 4月12日付けのロイター紙によると、ジョンソン・エンド・ジョンソンに対するタルク関連の訴訟は全米で6,610件起きているという。内容は、主に女性が衛生用品利用による卵巣癌の発症リスクの警告を怠ったとするもの。卵巣ガン発症への賠償を求め、2016年と2017年にミズーリ州で行われた5件の陪審員裁判の内、4件については同社の責任が認められ、同社は合計3億700万米ドル(約329億円)の賠償を命じられた。さらにカリフォルニア州の62歳の女性が同社を相手取り起こした訴訟では、同社に4億1,700万米ドル(約447億円)の賠償義務があると認定。しかしミズーリ州での一部とカリフォルニアでの賠償については、後に控訴裁判所で同社の主張が認められ、同社側が勝訴している。

 米食品医薬品局(FDA)は、裁判で争点となったタルクについて、含水ケイ酸マグネシウムであり、化粧品等のパーソナルケアの他、チューインガム等の食品や錠剤にも使われていると説明。アスベストとは結晶構造が異なると記述しているが、タルクの化学組成はMg3Si4O10(OH)2であり、アスベストはMg6Si4O10(OH)8と構造が似ている。FDAによると、米国では1960年からタルクを原料とするパウダーと卵巣ガンとの関係が問題視されていたが、研究論文等では明確な結論に至っていなかったという。しかし1970年代からは、タルクとアスベストとの関係が注目されるようになった。これはタルクによる被害が拡大していたからだと見られる。しかし2009年9月28日から2010年9月27日までの1年間にわたりFDAがファンデーション等の化粧品やベビーパウダーの検査を実施した結果は、全ての項目で「アスベストの検出なし(No Asbestos Detected:NAD)」とされている。

 タルクはパーソナルケアの他にも、紙、プラスティック、塗料、ゴムの製造等、広範にわたり使用されている。日本でも山口県の准看護士が中皮腫を発症し、山口労働基準監督署は2012年、1981年から86年に医療用ゴム手袋の再利用のためにアスベストを含むタルクを使った作業を行ったのが原因だとし、労災認定している。

【参照ページ】J&J loses trial over claims linking cancer to asbestos in talc
【参照ページ】J&J, Imerys unit must pay $117 million in N.J. asbestos cancer case
【参照ページ】Products Ingredients: Talc
【参照ページ】タルクへの石綿含有可能性調査結果について:厚生労働省
【参照ページ】手術用手袋再利用のためのタルク吸入で労災認定:日本看護協会
【参照ページ】タルクとは?:(株)福岡タルク鉱業所
【参照ページ】ベビーパウダーに「発がん性物質」は本当か 原料タルクと卵巣ガンの関連性は?

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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