国際的な気候変動情報開示推進NGOのCDPは4月9日、セメント世界大手13社の気候変動対策状況を分析したレポートを発表した。日本の太平洋セメントも分析対象となった。セメントは産業界で2番目に二酸化炭素排出量が多い業界。
CDPの調査によると、セメント企業は過去4年間毎年1%の割合で二酸化炭素排出量を削減している。しかし、パリ協定で定めた2℃目標達成のためには、現状の倍以上の削減が求められる。
(出所)CDP
13社のうち評価が最も高かったのはインドのDalmia Bharat。その他、インド企業は2位Ambuja Cement、4位Shree Cementと上位を占めた。上位企業は、各国の規制強化等が事業リスクとなる「移行リスク」や気候変動課題に対する経営ガバナンス「ガバナンス&戦略」が高い評価だった。一方、日本で唯一対象となった国内最大手の太平洋セメントは13社中11位と低迷。気候変動による水位上昇や水ストレス等が事業リスクとなる「物理的リスク」は1位だったが、「移行リスク」「ガバナンス&戦略」は13社の中で最下位に近かった。このことは、来るリスクに対応する経営体制にないことを示している。
CDPは同レポートの中で、セメント業界向けの提言もまとめた。まずはセメント工場での廃棄物エネルギーの活用。化石燃料の替わりに廃棄物を燃やすエネルギーを再利用することで二酸化炭素排出量を抑制できる。欧州ではエネルギーの60%以上を廃棄物から得ているセメント工場も出てきている。続いて、代替素材の活用。セメントの主要素材である石灰はその生成過程で二酸化炭素を排出するため、天然ポゾランや焼成クレーなどの自然素材への切り替えが推奨される。これらの素材は特定地域からしか入手できない点で不便であるが、代替素材への切り替えは必要不可欠。企業が避けるべきは、二酸化炭素を排出する別の素材への切り替えで、例えば石炭燃焼で生じるフライアッシュやスラグの排出量を増やしてしまうような素材の使用は短期的な解決方法でしかないとした。
また、新技術への投資では、インド企業が世界をリードしており、炭素回収・貯蔵(CCS)技術の導入が進んでいる。加えて政府に対して、規制強化も呼びかけた。
【参照ページ】Cement – the invisible polluter
【レポート】Building pressure
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