世界銀行は3月18日、気候変動による国内強制移住問題に焦点を当てた初の報告書「Groundswell:Preparation for the Internal Climate Migration」を発行。2050年までに発展途上国1億4,000万人以上が国内移住を迫られる可能性があると発表した。移住数は2050年まで増え続け、その後さらに加速する可能性があるという。
今回の報告書は、発展途上国の人口55%を占めるサブサハラ地域アフリカ、南アジア、中南米の3地域を対象。今後、気候変動と適切な開発に向け具体的なアクションを取らない場合、気候変動の影響により1億4,000万人以上が移住を迫られると試算・これは3地域の人口合計の2.8%に相当する。
国内移住の主な原因は、水供給量と農作物収穫量の減少、海面上昇、暴風雨被害等により現在の生活圏で生活できなくなること。とりわけ貧困地域ほど影響を受けやすい。同報告書は、気候変動と開発ともに持続可能でない「悲観シナリオ」、開発では改善がなされる「包括的開発シナリオ」、持続可能な開発と気候変動対応が進む「気候変動対応シナリオ」の3つで状況を分析した。
国内移住の規模は、悲観シナリオ下で、サブサハラ地域で8,600万人、南アジアで4,000万人、中南米で1,700万人で合計1億4,300万人。包括的開発シナリオ下では3地域合わせて6,500万人から1億500万人。気候変動対応シナリオでは3,100万人から7,200満員と推計した。
今後の対応としては、まず気候変動により社会不安を生みやすい「ホットスポット」を特定すること。気候変動の影響を受けやすい地域では貧困削減や社会的保護を手厚くするとともに、移住先となる都市部では大量の人口流入に備えた住宅、交通機関、インフラ、社会サービス、雇用機会等の整備を行う必要が出てくる。また、開発と気候変動対応を適切に組み合わせ、低リスク地域へ移住市民を誘導するとともに、移住後の生活を可能にするスキル研修、雇用創出プログラムも重要となる。
同報告書は各国政府に対し、二酸化炭素排出量の削減を加速化させるとともに、国レベルの開発計画に移住関連を追加し特定地域の人口膨張等に備えることを呼びかけた。また、移住関連の理解を深めるための投資を行い、小規模地域の状況を詳細に把握し、関連データを収集およびモニターする能力を構築するよう警鐘を鳴らした。
【参照ページ】Groundswell: Preparing for Internal Climate Migration
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