環境省は3月15日、2017年6月に設置した「カーボンプライシングのあり方に関する検討会」の取りまとめ報告書を公表した。二酸化炭素排出量の長期的な大幅削減は、現行施策の延長線上では極めて難しく、カーボンプライシング(炭素価格)を導入すべきと結論付けた。今回の検討会報告を受け、環境省はカーボンプライシング導入に向け省内外での調整に入る。
カーボンプライシングは、炭素税や二酸化炭素排出権取引制度を通じ、二酸化炭素排出に課税し削減に経済的メリットを付与する制度。同報告書によると、カーボンプライシング導入国はすでに42ヶ国あり、今後導入を計画している国は88ヶ国と世界の半数に達する勢い。日本政府も、2012年に「地球温暖化対策のための税(温対税)」を導入し、全化石燃料に対して289円/tCO2の課税をしており、カーボンプライシングの一つと捉えているが、各国の炭素税と比べ課税額は極めて低く、同報告書も「その価格効果は極めて小さい」とした。
日本では、温対税の他に、ガソリンへの「揮発油税」、軽油への「軽油引取税」、ジェット燃料への「航空機燃料税」等があり、運輸部門では化石燃料に幅広く課税されており、各国と比べても比較的課税額が高い。しかしながら、運輸以外の発電や産業用途の化石燃料利用については、温対税と「石油石炭税」の税額が非常に低いため、カーボンプライシング導入国と比べ、削減インセンティブが働きにくい状況が生まれている。
研究会は、炭素排出量に応じて課税される「明示的カーボンプライシング」を導入することで、産業のイノベーションを誘発できると言及。「カーボンプライシングにより共通の方向性を示していくことを通じて、脱炭素社会に向けてあらゆる主体を円滑に誘導していくことが重要である」と強調した。また、企業の設備投資が細る中、カーボンプライシングは投資の活性化にも寄与するとした。
また、今後の検討課題として、カーボンプライシングを課すことで排出を伴う産業が国外に流出し世界的な削減に寄与しない「炭素リーケージ」の問題や、低所得者層にとって価格上昇が重荷となる「逆進性」を挙げ、炭素税の使途等含め他の政策とパッケージ化していく必要性も論じた。
【参照ページ】カーボンプライシングのあり方に関する検討会
【報告書】「カーボンプライシングのあり方に関する検討会」取りまとめ
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