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【国際】シナリオ次第で化石燃料設備投資1.6兆ドルがリスクを負う可能性。カーボントラッカー報告

 英シンクタンクのカーボントラッカーは3月8日、2025年までの化石燃料への投資状況を分析したレポート「Mind the gap: the $1.6 trillion energy transition risk」を発表した。同レポートは今後の化石燃料市場を3つの異なるシナリオを用いて分析。世界が今後、気温上昇を1.75℃未満に抑えようとした場合、化石燃料分野への設備投資1.6兆米ドル(約170兆円)がリスク資産となると結論付けた。カーボントラッカーは「座礁資産」という単語の生みの親。

 同レポートが用いた3つのシナリオは、国際エネルギー機関(IEA)が発表した3つのシナリオに基づいている。IEAは、各国の導入済みまたは導入予定の気候変動政策を踏まえた「New Policies Scenario(NPS)」、気温上昇を50%の確率で2℃未満に留める「Sustainable Development Scenario(SDS)」、気温上昇を50%の確率で1.75℃未満に留める「Beyond 2 Degrees Scenario(B2DS)」のシナリオで未来予測を行っており、現状をベースとしたNPSが基本シナリオとなっている。

 カーボントラッカーは、上記3シナリオのいずれだとしても、今後、エネルギー需要を満たすためには2025年までに膨大な設備投資が必要となると分析。2018年から2025年までの必要設備投資総額は、NPSの場合4.8兆米ドル、SDSの場合4兆米ドル、最も気温上昇を抑えるB2DSでも3.3兆米ドルだと算出。今後国際社会が気候変動緩和に邁進した場合のB2DSでは、NPSに比べ約1.6兆米ドルの設備投資が不要となり、リスク資産となると見通した。

 B2DSでリスク資産となる金額は、化石燃料別に異なる。石炭は、新規設備投資額は他の2つに比べて小さいが、リスク資産に転じる割合は大きい。2025年までにリスク資産となる額は620億米ドル。地域別では、中国が410億米ドル、米国が100億米ドルを抱える。インドでは輸入一般炭の代替として石炭採掘設備投資が可能だが、それ以外ではなくなる。

 石油は、B2DS下では、1.3兆米ドルがリスク資産となる。地域別では米国が5,450米ドル、カナダが1,100億米ドル、ロシア850億米ドル、ブラジル700億米ドル。オイルサンド投資は非経済的となり、ごく一部の北極海採掘や重油投資のみが可能となる。

 天然ガスは、B2DS下では、2,280億米ドルがリスク資産となる。地域別では米国320億米ドル、カタール140億米ドル、カナダとノルウェーが130億米ドル。欧州で開発中の天然ガス採掘事業の半分は不要となり、液化天然ガス(LNG)
の増産も10年間不要となる。

 今回のリスク資産算出は、国際社会が気候変動対策に本腰を上げるB2DSをベースとしているため、動向は国際社会の本気度次第ということは否めない。一方、一度設備投資をしてしまえば、サンクコスト化することを避けるため、化石燃料採掘に従事する企業には、気候変動対策を妨害する潜在的な動機が生まれることになる。資源採掘は政治的影響力が強いため、潜在的な動機のほうが恐ろしいファクターとなりうる。

【参照ページ】Energy firms risk wasting $1.6 trillion by ignoring low-carbon transition
【レポート】Mind The Gap: the $1.6 trillion energy transition risk

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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