欧州委員会は3月8日、サステナブルファイナンスに関する新たなアクションプランを発表した。同分野では1月30日、欧州委員会が設置した「持続可能な金融についてのハイレベル専門家グループ(HLEG)」が最終報告書を公表しており、今回のアクションプランはそれを受けたもの。HLEG報告書からわずか1ヶ月強というスピード対応で、アクションプラン発表を実現した。
【参考】【EU】持続可能な金融についてのハイレベル専門家グループ(HLEG)、最終報告書発表(2018年2月1日)
EUは、サステナブルファイナンスを、EUの重要政策「資本市場同盟(CMU)」の一つと位置づけている。EUの気候変動2030年目標の達成だけでも追加投資が1,800億ユーロ(約24兆円)必要と試算しており、EU全域での協調的な政策推進を図っている。今回のアクションプランには、気候変動や国連持続可能な開発目標(SDGs)に向け資金を動員するための政策骨子が記されている。今後、EU法制定や政策誘導を含めた対応を実施していく。
アクションプランの内容は大きく4つ。まず、「グリーン」や「サステナブル」の定義明確化作業を今年3月にも開始。5月にもEU法体系の中に定義を盛り込む法改正に着手し、2019年夏頃に法改正を成立させる計画。議論は、気候変動緩和に関するものを優先し、続いて気候変動適応や他の環境用語の定義付けを行う。定義確定作業では新たに専門家グループを設置する。
続いて、金融商品に対するEU公式の「グリーン」ラベルの制定。まず2019年にグリーンボンド公式基準策定のための専門家グループ設置し、同年夏頃にグリーンボンド基準を含め、EU公式の金融商品「グリーン」ラベル創設する。その一環として、ESG投資インデックスのグリーンウォッシング(環境配慮欺瞞)を防止するため、EU法を強化しインデックスの透明性を強化する。低炭素投資のインパクト評価を推進するための政策誘導も検討する。
3つ目は、アセットオーナーや運用会社が投資判断にサステナビリティを盛り込むことをルール化するフィデューシャリー・デューティー(受託者責任)の明確化。第2次金融商品市場指令(MiFID2)の改正も含めたEU法レベルでの対応を検討している。同様に、銀行と保険会社に対しても、サステナビリティリスクをリスクマネジメントに織り込むよう規制強化を行う。保険業界では保険販売業務指令(IDD)の改正も視野に入れている。検討内容は今年5月に発表し、EU法改正を今年第2四半期に予定している。マクロ・プルーデンス政策を担当する規制当局にもサステナビリティ要件が盛り込まれる予定。一方、銀行に対して適用する予定の「グリーン・サポーティング・ファクター(環境配慮対象への低金利融資措置)」に対しては関係者からすでに否定的見解も出ており、導入が実現するかは今後の動向に注意が必要だ。
企業の情報開示も対象となる。EUはすでに非財務情報開示指令が出されているが、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)ガイドラインの内容を非財務情報開示指令に盛り込み法制化する作業を開始する。制定は2019年夏頃。コーポレート・ガバナンスにサステナビリティ戦略を盛り込む政策の検討も行う。
今回のサステナブルファイナンス・アクションプランが実現すると、世界で最もサステナビリティに踏み込んだ金融規制や企業報告規制が、EUレベルで誕生することになる。
【参照ページ】Sustainable finance: Commission's Action Plan for a greener and cleaner economy
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