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【アメリカ】上場企業の役員と従業員の給与格差開示義務が開始。初年度情報開示に注目集まる

 米国では2018年から、上場企業に対し役員報酬と一般社員の給与格差の開示義務が課される。発端は、2010年7月に制定された「ドッド=フランク・ウォール街改革及び消費者保護法」で、役員報酬に対する株主権限を強化した「SAY ON PAY」が世界に先駆けて法制化された。それに基づき、2015年8月に米証券取引委員会(SEC)が、主要な役員(PEO)の報酬と一般社員の給与格差(ペイ・レシオ)を開示する最終ルール(ファイナル・ルール)を発表。今年が施行初年度となる。ペイ・レシオの開示については、SEC内に反対派も多く、また企業も業務負担が増えると反発しており、トランプ政権誕生後に撤回されると見られていたが、現在まで撤回の兆しはなく、予定通り導入を迎えた。

 2010年ドッド=フランク法で盛り込まれた「SAY ON PAY」の内容は多岐に渡る。「役員報酬の株主承認」「報酬委員会の取締役会からの独立性」「役員報酬の追加的開示」「授与が誤りであった報酬の回復」「従業員ならびに取締役のヘッジ行為の開示」「報酬構造の報告の促進」「国法証券取引所の登録ブローカーの議決権」。この中で「ペイ・レシオ」に関連するのが、「役員報酬の追加的開示」に関する第953条だ。第953条では、すでにルール化されていた役員報酬構造や評価理由の開示に加え、役員報酬と株主総利回り(TSR)等の企業の財務業績との関連性の開示義務を追加する内容と、「ペイ・レシオ」の内容の2つが記載されている。

 第953条に記された「ペイ・レシオ」に関する内容は、主要役員(PEO)の報酬と、PEOを覗いた従業員の報酬の中央値との比率の開示を義務化している。詳細ルール制定の任を負ったSECは、法が定める「一般社員」には、本体及び連結対象会社(海外企業も含む)におけるフルタイム従業員、パートタイム従業員、季節従業員、一時雇用従業員、PEO以外の役員まで全て含めるとするルールを定めた。算出対象は、決算日前の3ヶ月間に少しでも在籍していた社員とし、上場企業にはグループ企業全ての給与情報をかき集める必要性が生まれた。業務負担を懸念する声もあり、SECのファイナル・ルールでは、海外の給与データについては全従業員数5%以下に抑える範囲であれば除外できると容認した。

 今年に入り、すでに複数の企業は、ペイ・レシオの開示を実施している。ハネウェル「333:1」、テバ「302:1」等。ガバナンス調査Equilarによると、米企業の報酬比率の中央値は140:1で、企業規模が大きいほど差が広まるという。売上が150億米ドル以上の企業では、263:1に広がり、従業員数43,000人以上の企業では318:1となる。現時点での開示企業は20社ほどと少ないが、今後数ヶ月内に到来するアニュアルレポート発行や株主総会議案通知の中で、発表する企業が増えてくる。

 ペイ・レシオの開示については、株主以上に従業員からの関心が高いという向きもある。リーマンショック時には、金融機関のリストラの影でCEOが巨額の報酬を得ていたことが社会問題となった。今回も、株主だけでなく、従業員や社会からの反応に注目が集まっている。

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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