グリーンボンド・ガイドライン策定の国際NGOの英CBI(気候債券イニシアチブ)は2月7日、2017年の中国でのグリーンボンド市場レポート「China Green Bond Market 2017」を発行した。2017年の国別グリーンボンド発行額は、首位米国424億米ドル(約4.6兆円)に次ぎ、中国が2位で371億米ドル(約4兆円)。そのうち82%はオンショア市場での発行。さらに69%はインターバンク市場での売買だった。
中国は、中国人民銀行が独自の「中国版グリーンボンド・ガイドライン」を2015年に発行。世界のデファクトスタンダードとなっている国際資本市場協会(ICMA)のグリーンボンド原則(GBP)やCBIの気候債券基準(CBS)より緩い国内基準が導入されている。2017年の中国での発行額371億米ドルのうち、CBIのCBSに適合するものが229億米ドル、中国版グリーンボンド・ガイドラインにのみ適合するものが142億米ドルだった。
国際基準に適合しない142億米ドルの内訳は、使途によるものが31件87億米ドル、調達資金の5%超が運転資本に充当されるものが18件40億米ドル、情報開示規定を満たさないものが15件15億米ドル。国際基準では、高効率石炭火力発電(クリーンコール)、化石燃料由来の電力送電のための省エネ送電網、50MWを超える大規模水力発電所、最終ごみ処分場のための埋立は使途として認められていないが、中国版では許容される。運転資本については、国際基準では5%以下の上限が定められているが、中国版では50%以下と緩い。また、国際基準では、発行時に計画している使途を開示しなければならないが、中国版ではなくてもよい。
中国でのグリーンボンド市場の大きな特徴は、発行体、購入者がともに国内の銀行に偏っている点。2017年の中国での発行者は、商業銀行が47%、政府系銀行が15%と、銀行だけで70%以上を占め、企業の発行シェアは22%だった。地方政府運営投資会社による発行も増えている。それでも2016年に商業銀行だけで73%を占めていた状況を考慮すると、発行体が多様化してきたと言える。発行市場は82%がオンショア市場。内訳は、中国人民銀行が管理し金融機関のみが参加できるインターバンク市場が69%、上海証券取引所が10%、深圳証券取引所が3%。一方、オフショア市場は18%、海外法人による発行「グリーン・パンダ債」は1%未満だった。
使途は、再生可能エネルギーが27%、汚染防止19%、輸送インフラ16%、資源保全・リサイクル8%、省エネ7%、一般用途やリファイナンス7%。気候変動や汚染防止を使途にするものが多い。また、セカンドオピニオン提供者では、EY35%、PwC10%、デロイト10%、KPMG3%と4大監査法人系で58%を占め、中国では4大監査法人系の存在感が突出している。現地系の北京中財緑融諮詢は6%、中節能諮詢(CECEP)は4%、中債資信評估3%だった。
中国では2017年、中国開発銀行が初めてリテール向けのグリーンボンドを発行。また香港と中国本土の債券市場を接続する「ボンドコネクト」を活用し中国農業銀行が30億米ドルのグリーンボンドを発行。グリーンボンドの購入者の多様化傾向も見られる。さらに、中国開発銀行、中国工商銀行(ICBC)、中国銀行、中国長江三峡集団は、海外売出しのグリーンボンドではCBS認証取得するなど、国際基準を意識した発行も増えてきた。日本国内では、ICMAのGBPに準拠するグリーンボンドは出てきているが、CBS認証を取得する動きはまだ見られない。
【レポート】China Green Bond Market 2017
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