世界銀行グループは1月30日、「世界の富の推移2018(The Changing Wealth of Nations 2018)」を発表。世界の富は、過去20年間で大幅に増加したものの、24ヶ国では一人当たりの富が減少または伸び悩んでいると分析した。同報告書は、富を、従来のGDPではなく、自然資本(森林や鉱物)、人的資本(生涯にわたった所得)、生産された資本(建築物やインフラ等)、対外純資産の合計と定義。新たにストックの概念を用いて141ヶ国を分析した。1995年から2014年の20年間分の公開データを用いた。
同報告書によると、世界の富の合計は過去20年間で66%増加。690兆米ドルから1,143兆米ドルに増えた。しかし、格差は大きく、高所得のOECD諸国の一人当たりの富は低所得諸国の52倍となっている。一人当たり富の減少も、低所得の大国や、化石燃料への依存度の高い中東諸国、2009年の金融危機の影響を受けたOECD諸国で確認された。一人当たりの富の減少は、未来の所得の減少を意味し、通常のGDP統計では見えてこない示唆を得た。
1995年に低所得国とされた52ヶ国のうち、28ヶ国は中所得国へ移行。これらの国は、自然資本の活用に成功し社会的インフラや人的資本を増加させた。一方、低所得国のままでいる残り24ヶ国のうち、12ヶ国は資源リッチ、8ヶ国は破綻国家に分類される。しかしながら、成長が自然資本を枯渇させることと同意ではない。通常人々が抱く「自然資本を枯渇させての成長」という認識と真逆に思えるが、実際、OECD諸国では、一人当たり自然資本は低所得国の3倍あり、富全体に占める割合は3%にすぎない。
世界の自然資本の価値は。1995年からの20年間で2倍に増加している。大きいのはコモディティ価格の増加や、資源の確認埋蔵量の増加。一方で、生産林の価値は9%減少した一方、農地の価値は増加した。
世界銀行は、過去2006年と2011年にも同様のレポートを出しているが、人的資本の考えを取り入れたのは今回が初めて。世界全体での富の配分は、人的資本が3分の2、生産された資本が4分の1、自然資本は10分の1。人的資本の割合が非常に大きい。人的資本は個人が生涯に渡って得る所得を測っており、教育や健康などの要素も考慮される。女性が世界の人的資本に占める割合は40%にとどまり、男女格差をなくすことで人的資本は18%増加すると分析された。
但し、国毎に構成比は大きく異なり、低所得国では自然資本が47%、低中所得から中所得国では25%を占める。
同報告書は、WAVES(生態系サービスの経済的価値評価)パートナーシップとGlobal Partnership for Education(教育のためのグローバル・パートナーシップ)が部分的に資金拠出し、作成された。
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【参照ページ】World Bank Report Finds Rise in Global Wealth, but Inequality Persists
【報告書】The Changing Wealth of Nations 2018
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