※2019年度版は【ランキング】2019年 ダボス会議「Global 100 Index: 世界で最も持続可能性のある企業100社」へ
毎年恒例の世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)が、2018年は1月23日に開幕しました。ダボス会議の目玉のひとつは、サステナビリティの観点で世界各国の企業を評価する”Global 100 Most Sustainable Corporations in the World” (Global 100 Index)のセッション。ここで発表された結果は、カナダの出版社Corporate Knights社によって「世界で最も持続可能性のある企業100社」(ランキング)として発表されます。早速、2018年の顔ぶれを見ていきましょう。
Global 100 トップ10
順位 | 企業 | 国 | 業界 |
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1 | ダッソー・システムズ | フランス | IT |
2 | ネステ(Neste) | フィンランド | エネルギー |
3 | ヴァレオ | フランス | 自動車 |
4 | Ucb | ベルギー | 医薬品 |
5 | アウトテック | フィンランド | 建設 |
6 | アムンディ | フランス | 金融 |
7 | シスコシステムズ | 米国 | ハードウェア |
8 | オートデスク | 米国 | IT |
9 | シーメンス | ドイツ | 電機 |
10 | サムスンSDI | 韓国 | 電機 |
(出所)CorporateKnights社の発表を基にニューラル作成
昨年に引き続きトップ10入りしたのは、
の2社のみ。上位ランキング企業が大幅に入れ替わった背景には、ランキング評価手法の変更があります。詳しくは後述しますが、今年は新たな評価項目として「グリーン商品売上」が追加。ヴァレオ等、売上に占めるグリーン商品の割合が高い企業がランキング上位に浮上しました。その結果、トップ10のうちフランス企業が3社入り、韓国SDIが近年では初のトップ10入りを果たしました。
また、日本でも知名度の高い企業やSustainable Japanでしばしば取り上げる企業も多数、11位から100位の間にランクインしています。
13位 メルク・アンド・カンパニー(MSD)(米国 医薬品)
15位 ピアソン(英国 出版)
19位 フィリップス(オランダ 電機)
21位 本田技研工業(日本 自動車)
24位 オーストラリア・コモンウェルス銀行(オーストラリア 金融)
26位 インテル(米国 半導体)
30位 ドイツ取引所(ドイツ 金融)
34位 アストラゼネカ(英国 医薬品)
35位 ノキア(フィンランド ハードウェア)
36位 BNPパリバ(フランス 金融)
37位 イーライリリー(米国 医薬品)
38位 ストアブランド(ノルウェー 金融)
39位 ABB(スイス 電機)
43位 アプライド・マテリアルズ(米国 半導体)
44位 武田薬品工業(日本 医薬品)
45位 シュナイダーエレクトリック(フランス 電機)
46位 新韓フィナンシャルグループ(韓国 金融)
47位 ケリング(フランス アパレル)
50位 ネスレ(スイス 食品)
53位 グラクソ・スミスクライン(英国 医薬品)
55位 積水化学工業(日本 化学)
57位 H&M(スウェーデン アパレル)
59位 NVIDIA(米国 IT)
60位 ダイムラー(ドイツ 自動車)
61位 ディアジオ(英国 食品)
62位 BTグループ(英国 通信)
63位 シンガポールテレコム(シンガポール 通信)
64位 ノバルティス・ファーマ(スイス 医薬品)
66位 クリスチャン・ハンセン(デンマーク 化学)
67位 コカ・コーラ・ヨーロピアン・パートナーズ(英国 食品)
68位 日産自動車(日本 自動車)
69位 テキサス・インスツルメンツ(米国 半導体)
70位 オーステッド(デンマーク 発電)
71位 アリアンツ(ドイツ 金融)
72位 レノボ(中国 ハードウェア)
74位 TSMC(台湾 半導体)
75位 メットライフ(米国 金融)
77位 HP(米国 ハードウェア)
79位 ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(米国 ハードウェア)
80位 ナショナルオーストラリア銀行(オーストラリア 金融)
81位 GE(米国 電機)
83位 アクゾノーベル(オランダ 化学)
84位 ロレアル(フランス 化粧品)
85位 アクサ(フランス 金融)
86位 ノルデア銀行(スウェーデン 金融)
89位 カナダ帝国商業銀行(カナダ 金融)
90位 ルノー(フランス 自動車)
91位 シンジェンタ(スイス 化学)
92位 ジョンソン・エンド・ジョンソン(米国 医薬品)
93位 ポスコ(韓国 鉄鋼)
95位 ユミコア(ベルギー 化学)
96位 ヴェスタス(デンマーク 電機)
98位 キャピタランド(シンガポール 不動産)
100位 シティ・ディベロップメント(シンガポール 不動産)
日本からは、本田技研工業、武田薬品工業、積水化学工業、日産自動車の4社が入りました。2015年まで毎年数を減らしていた日本企業は、2015年の1社から2016年と2017年は4社。2018年も4社を維持しました。武田薬品工業は3年連続でランクイン。日産自動車は1年ぶりにカムバックしました。一方、昨年ランクインしていたシスメックス、アステラス製薬、日本電気は外れました。
Global 100 地域別社数ランキング
| 2011 | 2012 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 |
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ヨーロッパ | | 44 | 59 | 55 | 49 | 52 | 53 | 59 | 59 |
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北米 | | 21 | 14 | 20 | 31 | 32 | 27 | 25 | 22 |
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アジア・太平洋 | | 31 | 23 | 18 | 18 | 15 | 18 | 14 | 14 |
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中南米 | | 3 | 3 | 5 | 2 | 1 | 2 | 2 | 5 |
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中東・アフリカ | | 1 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
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(出所)CorporateKnights社の発表を基にニューラル作成
地域別のトップ100企業数はほぼ変わらず。ヨーロッパと北米を合わせた企業で8割を超えました。アジア・太平洋のランクイン数も14社で昨年と同数でした。
Global 100 アジア内国別ランクイン社数ランキング
| 2011 | 2012 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 |
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アジア | | 31 | 23 | 18 | 18 | 15 | 18 | 14 | 14 |
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日本 | | 19 | 12 | 4 | 5 | 1 | 4 | 4 | 4 |
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シンガポール | | 1 | 2 | 3 | 4 | 4 | 4 | 3 | 3 |
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韓国 | | 1 | 2 | 1 | 3 | 4 | 4 | 3 | 3 |
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オーストラリア | | 6 | 6 | 9 | 5 | 4 | 5 | 2 | 2 |
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中国 | | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 1 | 1 |
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台湾 | | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
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香港 | | 1 | 0 | 1 | 1 | 1 | 0 | 1 | 0 |
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インド | | 3 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 |
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(出所)CorporateKnights社の発表を基にニューラル作成
アジア・太平洋地域内のランクイン企業数もほぼ変わらずです。日本以外では、韓国のポスコ、新韓フィナンシャルグループは昨年に引き続きランクインし、LG電子(昨年65位)に変わって、サムスンSDIが10位。シンガポール勢は、シンガポールテレコムとシティ・ディベロップメントが昨年に引き続き。一方、スターハブ(69位)が外れ、キャピタランドが入りました。台湾からは初めてTSMCがトップ100に入りました。
ランキングの評価方法①(4つのスクリーニング)
Global 100の選出方法は、昨年から大きな変更がありましたが、評価方法の第1段階である「4つのスクリーニング」では、変更はありません。まず、毎年10月1日時点において時価総額20億米ドル以上の企業が自動的に評価対象となります。その後に4段階のスクリーニングが行われ、そのスクリーニング基準を満たさない企業はその時点でランキング対象から除外されます(但し、昨年のGlobal 100ランクイン企業は、制裁スクリーニングに引っかからない限り、自動的にランキングの対象となります)。それを通過した企業のみにスコアリングが為され、ランキングされていきます。スクリーニングは以下の4点により行われます。
- サステナビリティ情報開示
- 財務状況
- 製品カテゴリー
- 制裁
1. サステナビリティ情報開示
まず最初にスクリーニングがなされるのは、サステナビリティ情報の開示の有無によってです。開示情報は以下の12項目に分類されます。
- エネルギー生産性
- 炭素生産性
- 水生産性
- 廃棄物生産性
- リーダーシップ多様性
- 役員報酬制度
- CEO報酬と従業員平均報酬の比率
- 年金保護
- 離職率
- 安全生産性
- イノベーション能力
- 税納付
- サプライヤー
この12項目のうち業界ごとに「優先的KPI」が定められており、その優先的KPIを75%以上開示していれば、このスクリーニングを突破することができます。業界ごとに定められる「優先的KPI」は、業界内に属している企業のうち最低でも10%の企業が開示しているものが選定されます。
2. 財務状況
情報開示のスクリーニングを通過すると次は財務状況でスクリーニングされます。具体的には、以下の要件のうち5つ以上満たす必要があります(PiotroskisのFスコアと呼ばれます)。
- 純利益が黒字であること
- 営業キャッシュフローが黒字であること
- (純利益/期初総資産)が前年度の数値を上回っていること
- 営業キャッシュフローが純利益を上回っていること
- 長期負債÷総資産の年平均額が増加していないこと
- 流動比率が高まっていること
- 前年に普通株式発行を行っていないこと
- 粗利益が前年より増加していること
- 総資産回転率が向上していること
3. 製品カテゴリー
財務状況のスクリーニングを通過すると次は製品カテゴリーのスクリーンが行われます。以下のいずれかに該当する企業はランキング対象から除外されます。
- GICS業界分類でたばこ業界に属する企業
- GICS業界分類で宇宙・防衛業界に属し、かつ防衛事業が売上の半分以上を占める企業
4. 制裁
最後に、2017年9月30日までの過去12ヶ月の間に、サステナビリティに関する問題で罰金等を受けていないかがチェックされます。罰金額が総収益に占める割合の大きさが業界内で上位(ワースト)25%以内にいなければ、このスクリーニングを通過します。
ランキングの評価方法②(スコアリング)
スコアリングする際の評価基準は、「サステナビリティ情報開示」のスクリーニングで使用した優先的KPIが用いられます。優先的KPIごとの数値の平均がその企業のスコアとなり、そのスコアに準じて順位が決まります。今回は大きな変化がありました(赤字の箇所が変更あり)。
- エネルギー生産性: 売上(購買力調整後米ドル換算)÷(直接的および間接的なエネルギー消費量ー再生可能エネルギー消費量)
- 炭素生産性: 売上(購買力調整後米ドル換算)÷ 二酸化炭素排出量(スコープ1とスコープ2)
- 水生産性: 売上(購買力調整後米ドル換算)÷ 水使用量
- 廃棄物生産性: 売上(購買力調整後米ドル換算)÷ 廃棄物排出量
- 大気浄化生産性: 売上(購買力調整後米ドル換算)÷ VOC排出量、売上(購買力調整後米ドル換算)÷ 窒素酸化物排出量、売上(購買力調整後米ドル換算)÷ 硫黄酸化物排出量、売上(購買力調整後米ドル換算)÷ PM排出量の4つをそれぞれ25%ずつ
- リーダーシップ多様性: 女性役員の割合(業界内評価)
- 役員報酬制度:サステナビリティ指標に連動した報酬制度の有無
- CEO報酬と従業員平均報酬の比率
- 年金保護: 75% ×(DB及びDC年金掛金total ÷ フルタイム当量従業員パーセンタイルランク)+ 25% ×((DB年金資産の公正価値 ÷ フルタイム当量従業員パーセンタイルランク)− (1-(DB年金資産の公正価値 ÷ 負債パーセンタイルランク))
- 離職率: 離職者数 ÷ 総従業員数
- 安全生産性: 事故死者数+20万人時間当りの労働喪失時間数
- イノベーション能力: R&D投資 ÷ 過去3年売上
- 税納付: 税金納付額 ÷ 過去5年EBITDA
- サプライヤー:ブルームバーグのデータをもとに企業の最大サプライヤーを特定。そのサプライヤーをGlobal 100と同じ評価方法でスコアリングした際のスコア
(今年度から1項目が新規追加)
- グリーン商品売上:米労働省労働統計局、カナダ統計局、気候債券イニシアチブ(CBI)等の分類でグリーン商品と位置づけられている製品・サービスが売上全体に占める割合
最終ランキングの作成
最終ランキングは全業界横断での評価ではなく、まず業界ごとのスコアランキング表が作られます。そして、ベンチマーク指標であるMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)でのセクター(業界)割合を用い、各業界からの最終ランキングに入ることができる業界ごとの企業数を割り当てます。そして、その業界割当数を用い業界ランキングの上位企業から最終ランキングに入れられていきます。
【ランキング】Global 100 2018
【評価方法】The 2018 Global 100: Overview of Methodology
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