ドイツで、男女賃金格差を知る権利を保障する新たな法律「賃金透明法(Wage Transparency Act)」が1月6日、完全施行された。同法は、2017年7月に施行されたが、賃金格差を知る権利の保障の部分については2018年1月13日に遅れて施行されることとなった。
今回の施行により、従業員200人以上の企業と公的機関で働く従業員は、同等の仕事をする6人以上で構成される性別グループの賃金と、自分の賃金の査定方法についての情報開示を雇用主に対して求めることができるようになった。加えて、従業員500人以上の企業は、同法を遵守していることを証明するため定期的に給与体系のアップデートを情報開示する義務を負った。
新法制定の背景には、欧州委員会の統計部局ユーロスタットが毎年発表しているデータがある。2014年、2015年の時点で、ドイツ女性の1時間当たりの賃金は男性より平均でそれぞれ22.3%、22.0%低い。この数値はEU加盟国内で、エストニアとチェコに次ぐワースト3。EU加盟国平均の16%台と比べて大幅に低かった。
(出所)EU
ドイツ家庭・高齢者・女性・青少年省は、同国での男女賃金格差が大きい要因について、女性就労者が低賃金分野に集中していること、経営幹部ポストに就いている人が少ないこと、女性のキャリアが育児によって長期的に中断されることともに、差別や賃金をめぐる透明性の欠如も要因になっていると主張している。ドイツでもすでに、同一労働に対し男女に異なる賃金を支払うことが禁じられているが、多くの従業員は男女による賃金格差を認知していない、または存在を証明できないできた。政府は、今回の新法により、賃金について語ることがタブー視されている慣行を打破したいと考えている。
一方、ドイツ経営者団体連合会(BDA)のステファン・カンペーター事務局長は、同一労働同一賃金が規定されている中、新法は手続を複雑にし、社会的混乱を招き、不公平感を助長すると批判した。
【参考ページ】New law allows employees to know how much their co-workers earn
【データ】Eurostat: Gender pay gap in unadjusted form
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