米連邦エネルギー規制委員会(FERC)は1月8日、リック・ペリー・エネルギー長官が要望していた一種の容量メカニズムの導入を拒否する決定を下した。代わりにFERCが電力システムの安定性を包括的に調査することを決めた。容量メカニズムとは、消費電力量ではなく発電設備容量そのものに料金を支払う仕組みで、欧州でも検討されている。
エネルギー長官は2017年9月29日、原子力発電や石炭火力発電が電力系統の安定化の役割を果たしているとし、独立系統運用機関(ISO)と複数のISOに跨る系統を管理する企業(RTO)にコスト負担を求める料金体系の変更を、エネルギー省(DOE)組織法に基づきFERCに要望した。米国では、発送電がすでに分離されており、送電は別の会社によって運営されている。また、再生可能エネルギーが普及する中、ベース電源と言われてきた石炭火力発電や原子力発電が軽視されるようになってきた。エネルギー省は、石炭火力発電と原子力発電は送電網全体の安定性に寄与しているとして、原子力や石炭火力のコスト負担を送電企業にも求める主張を展開。FERCに対し、DOE提案の官報掲載後60日以内に同提案に基づく最終決定を下すか、DOE提案をパブリックコメント募集までの間暫定ルールとして導入するか要望していた。
今回FERCは、DOEの要望を正式に却下した。FERCは、1977年にエネルギー省から分離し、独立した委員から構成される委員会の形態で、エネルギー分野の監督を行っている。FERCは今回の決定の理由について、系統の安定化は非常に重要だとしつつも、「現行のISOやRTOが不公平で不合理だということが示されていない」とした。また、ISOやRTOが原子力発電所や石炭火力発電所を廃止に追いやるような証拠がないことも理由として挙げた。
FERCが代替として決定した電力システム安定性の包括調査は、電力卸売事業者に対し、新たな措置の必要性を広く問うもの。各地域の電力卸売事業者は、60日以内に所定の情報をFERCに回答しなければならない。また他の関係者も任意でコメントを寄せることができる。FERCはこの調査をもとに、FERC委員や業界での共通認識を形成する考え。
【参照ページ】FERC Initiates New Proceeding on Grid Resilience, Terminates DOE NOPR Proceeding
【文書】ORDER TERMINATING RULEMAKING PROCEEDING, INITIATING NEW PROCEEDING, AND ESTABLISHING ADDITIONAL PROCEDURES
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