国際エネルギー機関(IEA)は12月18日、石炭エネルギー市場レポート「Coal 2017」を公表した。同レポートによると、世界のエネルギー需要は増加していく中、世界の石炭需要は2022年までほぼ横ばい。石炭のエネルギー供給構成比や発電電源比は減少する。
IEAは、日米欧を中心した29ヶ国が加盟する国際的なエネルギー機関。1970年代のオイルショックを機に、エネルギー供給の安定化を図るため1974年に設立された。
2016年の世界の石炭消費量は、前年比で1.9%減少し、53億5,700万石炭換算tとなった。ガス価格の低下や再生可能エネルギーの台頭、エネルギー効率の改善を背景に、石炭需要は二年連続で減少となった。二年前との比較でも4.2%の減少となっており、IEAが統計を取り始めた過去40年間の中で最大の石炭需要減少期であった1990年代初頭とほぼ同じ状況だという。
2022年の石炭需要はやや戻って55億3,000万石炭換算tになると予測したが、過去5年間の平均消費量と同レベル。その結果、石炭のエネルギー供給構成比は2016年の27%から、2022年には26%にやや減少する。また、石炭火力発電による発電量は、2016年から2022年の間に絶対量で毎年1.2%増加するものの、発電電源比は2022年に36%を下回り、過去最低となる見込み。
地域別では、とりわけ中国とインドに注目。中国では、2016年に石炭火力発電所の数は増えたが、石炭消費量は減少。背景には小規模事業者や家庭での石炭燃焼の削減や、発電所や鉄工所の省エネ対応があると見られている。中国では今後石炭から天然ガスへの大きなシフトが予想されるとしたが、2022年には石炭火力発電のエネルギー供給比は依然55%と予想した。また、石炭採掘では、コスト増の傾向にあり、競争力が落ちていくだろうとした。
インドでは、再生可能エネルギーが急速に伸びているものの、石炭火力発電での石炭消費も伸びている。2022年までの石炭消費伸び率は年間約4%とした。インド政府の発表によると、インドでは2022年から2027年までの間に石炭火力発電所の新設を停止すると見られているが、現在50GW分の石炭火力発電所建設が進んでいる。一方、インドの石炭輸入については、同レポートは減少していくよ予測。政府は石炭輸入を縮小する政策を打ち出しており、国産石炭にシフトさせる見込み。しかし、国産石炭は質が低いため、燃焼効率や大気汚染等での課題を抱えていく。
その他、石炭貿易の動向については、石炭輸出大国であったインドネシアが内需を利用に輸出量を減らしていくため、需給がタイトになると予測した。一方、需要側では、石炭火力発電に対する懸念が日本、韓国、台湾で高まっていると指摘し、先行き不透明だとした。
米国では、トランプ政権誕生後の石炭推進政策により、生産が2022年までに5.1億石炭換算tにまで増加する見込みだが、一方石炭消費は、天然ガスの供給増、再生可能エネルギーの増加、電力需要総量の減少等により、2022年までに毎年約1%減少し、4.5億石炭換算tに縮小すると見通した。その分石炭は輸出に回る。一方、欧州は世界の石炭需要の6%しか占めておらず、今後もさらに割合は減少していく。
同レポートは、石炭回収・利用・貯蔵(CCUS)技術にも言及。CCUSは気候変動緩和のために重要な技術としながらも、展開が遅くれていると指摘。IEAは、加盟国や産業界とともにCCUS普及に取り組んでいると強調した。
【参照ページ】Coal demand to remain flat to 2022, resulting in a decade of stagnation
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