欧州司法裁判所(ECJ)は11月29日、フリーランスで働く英国人男性が、業務の委託元企業に対し、取得できなかった年次有給休暇の補償を求めて争った裁判で、フリーランス労働者に有給休暇取得の権利を認める判決を下した。取得できない場合は、金銭補償が認められる。インターネットビジネスが普及する中、フリーランス労働者が増加しており、フリーランス労働者の権利保護の判決が出たことが大きな注目を集めている。
長年にわたって争われた今回の裁判は、窓枠やガラスの契約セールスマンであるキング氏がサッシ・ウィンドウ・ワークショップ社を相手取り起こした。キング氏と企業間の雇用契約は100%の歩合給で、同氏はフリーランスという位置付け。争点となったのは、両者間には年次有給休暇に関する契約事項が存在しなかったこと。英国の裁判所では、契約時点からフルタイム労働者として扱われていなければ、有給休暇の権利は認められない。しかし、EU加盟国である英国では、EU法の解釈が関係する裁判は、欧州司法裁判所で最終的に判断されることになっている。
欧州司法裁判所は、「雇用者が労働者に対して有給休暇の取得権を提供しなかった場合は、労働者が行使できなかった権利分を持ちこし、蓄積することを可能としなければならない」とした。さらに、「雇用者はキング氏が仕事を中断しなかったことにより利益を得ており、本来であれば、雇用者こそが年次有給休暇に関する義務についての情報収集を行う立場にあった」と指摘した。
また、「EU法の要件に従って休暇の持ち越し制限に関する自国の法律がない場合には、労働者の有給休暇に関する権利が消滅する可能性があり、労働者の健康を尊重しなければならないというEU指令の目的を損なう形で雇用者が有利になる結果を招く」とし、EU指令に基づく労働者の権利擁護の立場を明確にした。
英国のEU離脱に関する法案では、EUからの離脱以前にEU法を基に出た判決は、離脱後も維持されることになっている。しかし、英最高裁判所は、判決を維持するか判断できる。そのため、同様な裁判が英国最高裁判所で審理され今回の判決が支持されるまでは、今回の判決が効力を持つ。
【参考ページ】EU's top court rules workers can claim compensation for untaken holidays
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