国際建設林業労働組合連盟(BWI)は11月21日、2020年東京オリンピック・パラリンピックでの会場建設がマレーシアでの人権侵害に関与し続けているとするレポート「Trade union rights in the Tokyo 2020 supply chain」を発表した。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会に対して第三者機関が状況をチェックする体制を構築することを求めている。同レポートによると、2020年東京オリンピック・パラリンピックの木材調達方針は、2012年ロンドンオリンピック・パラリンピックのものを大きく下回っているという。
2020年東京オリンピック・パラリンピックの会場建設やインフラ建設では、国産木材の活用を主としつつも、マレーシアからも大量の木材を輸入している。環境や人権を重んじるオリンピック・パラリンピックの準備・運営では、高い人権方針や環境保護方針が定められるのが常だが、同レポートによると、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は、既存の認証制度に依存しすぎており、マレーシアの現地で人権侵害を引き起こしている木材を購入し続けている。現地の状況に詳しいNGOは、再三に渡り、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会に対策を促しているが、状況は是正されていないという。
【参考】【日本】RANら国際環境NGO、東京五輪・新国立競技場建設での不正木材使用を非難(2017年8月5日)
人権侵害が起こしているのは、まずマレーシア財閥Shin Yangグループと同社子会社Zedtee Plywood。両社はマレーシアのサラワク州で木材の生産、加工、販売を行っている。レポートによると、両社は現地の労働法を順守しておらず、従業員の安全配慮も欠けている。強制労働に近い事態も発生しているという。現地の労働組合も乗り出しているが、両社により厳しく弾圧されているとも報告されている。この木材を伊藤忠建材やジャパン建材が仕入れ、東京オリンピック・パラリンピックの会場やインフラ建設に使われている。
伊藤忠建材やジャパン建材も一定の対策を採っている。両社はZedtee Plywoodの森林伐採地区である「Anap-Muput森林管理区」からの木材調達に関しては、認証取得木材を購入するようにしている。しかし同レポートは、現在の森林認証制度の多くは、流通・加工過程を管理する「CoC認証」が、認証取得していない木材の混入割合が30%以下であれば認証取得商品と認められるシステムに不備があるとしており、人権侵害を起こしている木材も伊藤忠建材やジャパン建材の仕入れに入り込んでいると指摘した。
そのため、BWIは、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会に対し、人権侵害や違法伐採に関するリスクを低減させるデューデリジェンス制度を導入し、とりわけ第三者機関を入れた苦情処理メカニズムを構築することを強く要求。ロンドンオリンピックでは、環境や労働基準を監視する機関としてNGOのSEDEXが採用され、独立した苦情処理機関としてCSLが設置されたことで、高い品質の大会運営ができたと高く評価されている。
今回の発表に対し、国際NGOは、伊藤忠建材、ジャパン建材、Shin Yangグループ、Zedtee Plywoodの4社に対応を促しているが、いずれからも返答はなかった。
【レポート】Trade union rights in the Tokyo 2020 supply chain
【参照ページ】Malaysia: Civil society reports labour rights violation in timber supply chain of Tokyo 2020; companies did not respond
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