国際人権NGOアムネスティ・インターナショナルは11月15日、コンゴ民主共和国でのコバルト採掘で児童労働や危険有害労働が関与している状況をまとめたレポート「Time to Recharge」を公表した。同レポートは2015年にアムネスティ・インターナショナルとAfrican Resources Watch(AfreWatch)が共同で開始し、世界主要コバルト関連企業26社の状況を報告した。2回目となる今年のレポートではその新たに3社を加えた29社の改善状況をレポートした。
コバルトは、米ドッド=フランク法が規定する「紛争鉱物」の対象のスズ・タンタル・タングステン・金には該当しないが、世界のコバルト採掘の50%以上は、同法が対象としているコンゴ民主共和国で採掘されている。主要産地の同国南部では11万人から15万人が主に手作業での採掘に従事しており、危険有害な作業に大人だけでなく子供も従事している。前回のレポートではこれら採掘されたコバルトのほとんどを中国のHuayou Cobalt(華友鈷業)の現地子会社Congo Dongfang International Mining SARL(CDM)が仕入れ、中国に輸出していることを暴いた。コバルトは、充電バッテリーの主要原料であり、電気自動車(EV)や再生可能エネルギー向けバッテリーとして需要が急増している。そのため、Huayou Cobaltからコバルトを調達している主要企業25社も同時に調査対象となった。
今回のレポートの対象はHuayou Cobalt及び4業界28社。日本企業ではソニーが対象となっている。評価項目は「コンゴ民主共和国とHuayou Cobaltに対するサプライチェーン調査を実施したか」「コバルト・サプライチェーンにおける人権リスクや人権侵害を発見する方針や制度を確立しているか」「問題の現場を特定し人権リスクや人権侵害を発見する行動を起こしたか」「コバルト・サプライチェーンの人権リスクや人権侵害の情報開示をしているか」「コバルト・サプライチェーンに関連する危害や人権リスクを低減するステップをとっているか」の5つをもとに、総合評価がなされた。
まず同レポートは、Huayou Cobaltの進捗状況を分析。前回レポート発表以降、Huayou Cobaltは人権リスクマネジメントが不適切だったことを認め、OECD(経済協力開発機構)の専門家との協議をした上でコンゴ民主共和国での対応に乗り出したが、同社によると仕入元の54社のうち国際基準に適合する作業の見直しを受入れたのは3社のみだという。アムネスティ・インターナショナルは、仕入れを一時的に停止し改善を要求すべきだと同社に要求しているが、同社は仕入れ停止は零細採掘工の所得に悪影響を与えるとして仕入れ停止を拒んでいる模様。事態の情報開示もほとんどなされていないという。アムネスティ・インターナショナルは、仕入れ停止は、OECDガイドラインや中国五鉱化工進出口商会(CCCMC)ガイドラインに沿うものだとして説得を継続している。
続いて同レポートは、コバルト・サプライチェーンの下流にいる企業28社についての対応評価を最高4点から最低0点までの5段階で評価した。4点を獲得した企業はなく、評価の中で最高得点となった3点を獲得したのはアップルとサムスンSDIの2社のみだった。ソニーは1点。
28社の評価
- カソード原料メーカー
- Hunan Shanshan Energy Technology(杉杉科技)(中国):1点
- L&F Material(韓国):0点
- Tianjin B&M Science and Technology(天津巴莫科技)(中国):0点
- バッテリーメーカー
- サムスンSDI(韓国):3点
- LG化学(韓国):2点
- ソニー(日本):1点
- Tianjin Lishen Battery(天津力神電池)(中国):1点
- Amperex Technology(香港):1点
- BYD(比亜迪)(中国):0点
- Coslight Technology International Group(光宇国際集団科技)(香港):0点
- Shenzhen BAK Battery(深圳市比克電池)(中国):0点
- 電子・通信機器メーカー
- アップル(米国):3点
- デル(米国):2点
- HP(米国):2点
- サムスン電子(韓国):1点
- Huawei(華為科技)(中国):0点
- レノボ(中国):0点
- マイクロソフト(米国):0点
- ボーダフォン(英国):0点
- 電気自動車メーカー
- BMW(ドイツ):2点
- テスラ(米国):2点
- ダイムラー(ドイツ):1点
- FCA(英国):1点
- GM(米国):1点
- フォルクスワーゲン(ドイツ):1点
- ルノー(フランス):0点
コバルト・サプライチェーンでの人権対応では、紛争鉱物フリー推進イニシアチブの責任ある鉱物イニシアチブ(RMI、旧CFSI)も2017年前半から強化しており、OECDガイドラインやに沿うデューデリジェンスプログラムやツールを開発中。さらに、コバルト精製事業者にはRMIの「Risk Readiness Assessment」を受けるよう求めている。RMIはアムネスティ・インターナショナルのレポート作成にも協力しており、11月14日、世界中のサプライチェーン改善に向け取り組む姿勢を改めて表明した。
【参照ページ】DEMOCRATIC REPUBLIC OF THE CONGO: TIME TO RECHARGE: CORPORATE ACTION AND INACTION TO TACKLE ABUSES IN THE COBALT SUPPLY CHAIN
【レポート】Time to Recharge
【参照ページ】Responsible Minerals Initiative Helps Companies Address Supply Chain Issues Identified in Latest Amnesty Report
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