米人権NGOヒューマン・ライツ・キャンペーン財団(HRC)は11月9日、企業のLGBTQに対する差別撤廃を評価する今年度結果「企業平等指数(Corporate Equality Index、CEI)2018」を公表した。HRCは、LGBTに「Q」を足した「LGBTQ」の用語を近年用いている。「Q」はQuestioning(クエスチョニング)やQueer(クィア)の意で、既存の性のあり方に左右されない志向の人を指す。米国企業や法律事務所ではますますLGBTQの差別をなくす動きが広がってきている。
CEIは、LGBTQに対する職場の公平性を示すベンチマークとして2002年にスタート。同調査では、フォーチュン1000入りしている米大手企業1,000社とAmLaw200入りしている米大手法律事務所を対象に毎年質問票を送付し、回答に基づきスコアリングしている。対象外の企業も、米国での従業員数が500人以上いれば質問票の送付を要求できる。今年は947社が回答した。
評価の観点は、企業の差別禁止方針、従業員の給与や人事制度待遇、LGBTQのダイバーシティ・インクルージョンに関する企業のコンピテンシーと責任、LGBTQ平等の公式コミットメント、市民責任の5つ。一昨年の調査からは満点の条件に、性的指向や性別認識に基づく差別を撤廃する方針や行動規範をグローバルに定めていることが加えられ、基準が厳しくなった。
今年の結果は、回答した947社のうち、609社が満点の100点を獲得。満点獲得企業は、昨年の517社から飛躍的に増え、米国大手企業や大手法律事務所の対応が非常に進んできていることがわかる。フォーチュン500企業のうち性的志向による差別の撤廃を公式に標榜する企業も、2002年には3%だったが、今回は83%にまで増えた。また459社は、性的志向を転換中の従業員を支援するガイドラインも設けていた。トランスジェンダーを含む性差別のない医療保障が企業界では常識とさえなっており、今年のCEI調査に参加した企業の79%がトランスジェンダーの従業員向けに最低一つのヘルスケアプランを提供している。
今年のCEIでは、フォーチュン500企業のうち、質問票に回答しなかった137社についても、公開情報をもとに評価を行い、企業に個別に結果がフィードバックされた。
米国ではLGBTQの権利は差別禁止法で明示的には保護されていない。さらに、トランプ政権誕生以降、オバマ政権時代に策定されたLGBTQ権利保護の仕組みを次々白紙に戻している。ジェフ・セッションズ司法長官も先月、1964年公民権法第7編に基づく差別禁止条例をトランスジェンダーには適用しない方針を発表した。
しかし、それでも大手企業は差別禁止に積極的に動いてきている。社内における方針の策定に留まらず、公の場でのLGBTQの人々の権利の支持、最高裁における重要なケースでの法定助言書への署名、また企業106社は平等法案(Equality Act)の賛同者にも。テキサス州では、テキサス州商工会議所を含む70社が州知事、州副知事、州下院議長宛てに、反トランスジェンダー法であるSB6法案を通過させないよう公開書簡を送付した。法案は、最終的に廃案となった。
【参照ページ】HRC Releases Annual Corporate Equality Index with Record 609 Companies Earning Perfect Scores
【レポート】Corporate Equality Index 2018
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