米経営学誌のハーバード・ビジネス・レビュー(HBR)は10月、2017年度の「世界のCEOベスト100(The Best-Performing CEOs in the World)」を発表した。同ランキングは、在任期間中の株主総利回り(TSR)および時価総額の増加という視点から、世界で最も優れた財務パフォーマンスを上げているCEOを格付するものだが、昨年からは新たに企業のESG(環境・社会・ガバナンス)指標も要素として採用されている。構成比は、財務パフォーマンスが80%、ESG指標が20%。
【参考】ハーバード・ビジネス・レビュー、「世界のCEOベスト100」の選定基準にESGを追加
さらにESG指標の評価については、今年からESGデータ提供会社であるサステナリティクス(Sustainalytics)とCSRHabの2社のデータを採用し、それぞれの会社保有データについて10%ずつが配分されている。理由についてはHBRは、企業の業績を評価する上でのESGの重要性を認識しつつも、その測定方向については主観的な側面もあり、調査機関によっては同一企業のパフォーマンスの評価に相当な差異が生じていることに注目しているからだとしている。
2017度のCEOベスト15は、
- インディテックス Pablo Isla(アパレル)(スペイン)
- WPP Martin Sorrell(広告代理業)(英国)
- NVIDIA Jensen Huang(IT)(米国)
- ヴァレオ Jacques Aschenbroich(自動車部品)(フランス)
- LVMH Bernard Arnault(アパレル)(フランス)
- ブイグ Martin Bouygues(建設)(フランス)
- KBC Johan Thijs(金融)(ベルギー)
- NIKE Mark Parker(アパレル)(米国)
- コンチネンタル Elmar Degenhar(自動車部品)(ドイツ)
- ACS社 Florentino Pérez Rodríguez(建設)(スペイン)
- コンパス Richard Cousins(建設)(食品)
- セールスフォース・ドットコム Marc Benioff(IT)(米国)
- アンハイザー・ブッシュ・インベブ Carlos Alves de Brito(飲料)(ベルギー)
- ダッソー・システムズ Bernard Charles(IT)(フランス)
- コロプラスト Lars Rasmussen(医療機器)(デンマーク)
今年の首位は、アパレル・ブランド「ZARA」を展開するスペイン・インディテックスのPablo Isla CEO。財務パフォーマンスは18位だが、ESGスコアが比較的高く総合1位を獲得した。2位から6位までのWPP、NVIDIA、ヴァレオ、MVMH、ブイグの各CEOは、昨年もトップ15に入っており、連続高ランクとなった。また今年のトップ100のうち72人は昨年もトップ100入りしていた。残り28人の大半は、CEO職退任によるもの。昨年まで二年連続の1位だったノボノルディスクのLars Rebien Sørensen CEOも昨年末でCEOを退任していた。
今年の財務パフォーマンス首位と2位は、昨年と同様、米アマゾンのジェフ・ベゾスCEOと中国テンセントの馬化騰CEO。しかし、総合スコアはいずれもESGスコアが足を引っ張り、総合ランキングは、アマゾン76位、テンセント61位だった。その他、財務パフォーマンス上位組は、3位ブラックロックのローレンス・フィンクCEOが総合ランキング32位、4位ネットフリックスのリード・ヘイスティングスCEOが総合ランキング89位、6位鴻海精密工業の郭台銘CEOが総合ランキング29位、7位アクティビジョン・ブリザードのボビー・コティックCEOが総合ランキング84位だった。
日本のCEOは、ベスト15入りはしていないが、ベスト100には、18位にシスメックスの家次恒会長兼社長、37位にKDDIの田中孝司社長、42位にファーストリテイリングの柳井正会長兼社長、65位にソフトバンクの孫正義会長兼社長、66位にSUBARUの吉永泰之社長、83位にNTTの鵜浦博夫社長がランクインした。シスメックスの家次会長は、財務パフォーマンス65位だったが、ESGスコアが比較的高く18位と日本最高位に輝いた。一方、ファーストリテイリング柳井会長は財務パフォーマンス14位、孫氏も財務パフォーマンスは13位と、それぞれの総合ランキングより高かったが、ESGスコアが低かった。
評価の手順としては、北アメリカ、ヨーロッパ、アジア、ラテンアメリカ、オーストラリアのエリアを含む株式インデックス「S&P Global 1200」の採用銘柄を対象とし、各企業のCEOをリストアップ。その際、評価の対象となるに十分な実績を確認するため、在任期間が2年未満の人は除外された。また有罪判決を受けた人や逮捕された人も除外された。この段階を経てリストに残ったのは31カ国887企業のCEO898人(CO-CEOを含む)。
次にDatastreamとWorld Scopeを通して、CEOの着任日から2017年4月30日までの財務データを収集。1995年以前に着任した人については業種毎調整済み株主総利回りのデータが存在しないため、1995年1月1日を初日として計算した。そして、各CEOの在籍期間における国毎調整済み株主総利回り、業種毎調整済み株主総利回り、時価総額の変化の3種類の数値を基に算定した。株主総利回りについては、いずれも配当の再投資を含み、国毎調整済みの場合には地域全体の上昇分を、産業別の場合には産業全体の上昇分については相殺する(差し引く)という方法をとった。時価総額の変化に関しては、配当、株式発行、株式買い戻し分を調整し、インフレの割合を調整後に米ドルに換算した。
国毎調整済み株主総利回りと業種毎調整済み株主総利回りは、リターンの割合が事業規模に比べて高いため小規模の企業の方が有利になりがちであり、時価総額の変化は大企業の方が有利となる傾向がある。従って、各CEOの全体的な財務データとして前述3種類の数値の平均を割り出しているのは、バランスが取れ、堅実な方法だとHBRは見解を示している。
今回リストアップされたCEOの平均在任期間は17年。在任中の財務リターンは年平均で2.507%だった。
【ランキング】The Best-Performing CEOs in the World 2017
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