国連責任投資原則(PRI)とコンサルティング大手PwCは10月12日、機関投資家に国連持続可能な開発目標(SDGs)への積極的な関与を呼びかけるレポート「The SDG Investment Case」を発表した。
SDGsは、2015年に国連の場で決定した世界が2030年までに達成すべき17の目標と169の具体的なターゲット。とりわけ制定の背景には、SDGsの達成には民間企業の協力が不可欠であり、産業界の大きな関与を呼びかけることにある。PRIは、企業と機関投資家はともにSDGsへ貢献することが求められているとしつつも、一方で機関投資家の多くは、SDGsに貢献しなければならない理由を理解していないことを問題視し、今回のレポートを作成した。PRIは、貢献の意義を、機関投資家の責務、リスク調整後リターンについての受益者や顧客の期待の観点から説明した。
同レポートは、機関投資家がSDGsに貢献すべき理由を5つにまとめた。
SDGsは投資家のフィデューシャリー・デューティー(受託者責任)の重要な一部分
フィデューシャリー・デューティーは、投資家に対し、受益者の最善の利益の追求する義務を課しており、短期および長期に財務的に顕著な影響を及ぼすESG要素を考慮することを要求している。SDGsは、世界全体が合意し最も切望するESG要素であるため、投資家はSDGsを考慮しなければならない。
マクロリスク:ユニバーサル・オーナーはSDGsへの考慮から逃れられない
規模の大きい機関投資家は、高度の分散化されかつ長期的なポートフォリオを有しており世界の資本市場全体を十分に代表している存在のため、投資リターンは経済全体の健全さが継続することに大きく依存している。SDGsの達成に失敗すれば、全ての国と産業になんらかの影響を及ぼし、マクロ金融リスクを生み出してしまう。また、ユニバーサル・オーナーはそのようなリスクへのエクスポージャーが高く、さらにはリスクそのものをユニバーサル・オーナーが投資した企業が引き起こしていると言える。
マクロ機会:SDGsは世界経済成長の原動力
いかなる長期投資家もが世界経済成長は財務リターンの構造的源だと認識しており、SDGsの達成は世界経済成長の大きく原動力となる。経済が成長すれば、企業売上や利益は伸長し、株や他のアセットのリターンを押し上げる。SDGsは、環境や社会に負荷をかけることなく、経済成長を達成するための実現可能なモデルを狙っている。
ミクロリスク:SDGsはリスクフレームワーク
SDGsによって提起された課題は、全ての産業、企業、地域、国において、財務に重要な影響を及ぼす特定の規制リスク、倫理リスク、事業リスクがあることを示している。将来において、環境破壊や社会的混乱のような著しい外部コストが財務諸表に乗っかってくるかもしれない。これらコストが内部化されるタイミングや程度が不確実性であることは、投資家にとって重大なリスク要素となっている。SDGsは、持続可能性の高い社会に向けた共通の道筋であり、したがって投資家のESGリスクフレームワークを強化できる。
ミクロ機会:SDGsは資本アロケーションガイド
企業が持続可能性の高い事業習慣、製品、サービスに向けて動き出していることは新たな投資機会となる。投資家はサステナビリティ課題の解決に資することは魅力的な投資機会だと信じるのであれば、投資戦略の中に明確にSDGsテーマやセクターを位置づけることができる。
レポートの中では、投資意思決定の尺度であるリスクとリターンの二次元の世界から、実社会へのインパクトを加えた三次元で計測する概念モデルも提示した。
【参照ページ】Five compelling reasons why investors should engage with the SDGs: PRI, PwC
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