サウジアラビアの国営サウジ通信(SPA)は9月26日、サルマン国王が、女性の自動車運転を許可する国王令を出したと発表した。2018年6月に施行される。同国で女性の運転が許可されるのは初めてで、これまで公的な場での女性の運転は逮捕、拘束や罰金の対象だった。今回の女性運転解禁は、国王の息子で現在サウジアラビアで最も重要な人物と言われるムハンマド・ビン・サルマーン副皇太子が主導し、石油依存からの脱却と経済および社会改革を目指す「ビジョン2030」に沿ったものだと言われている。これまで夫、息子、父親または男性の運転手に頼るしか交通手段がなかった女性たちは、行動の自由度が圧倒的に広がることや、それによる意識改革も予想される。
【参考】【サウジアラビア】サルマーン国王「ビジョン2030」で石油依存からの脱却を発表(2016年5月16日)
自身がサウジアラビア人でもあるロンドン・スクール・オブ・エコノミックス(LSE)のマダウィ・アル・ラシ-ド社会人類学教授は、BBCラジオ4の番組「Today」の中で、他にも女性には許可されていない重要な法的規制が改革されないままになっていると指摘した。
結婚
地方行政長官や後見人による許可が必要。外国人との結婚は内務省の承認を得なければならず、非イスラム教徒との結婚は非常に難しく、不可能に近い。
銀行口座の開設
店員など、女性自身の裁量で就ける仕事はある。しかし、男性の許可なしに銀行口座を開設することはできない。
裁判の公平性
女性の証言は男性の半分の効力しか持たない。遺産相続権も男性の半分となっている。
旅行
パスポートと身分証明書は、男性の許可なしには取得できない。通常、女性は単独で家を離れる事が許されない。
服装
公的な場ではすべての女性がアバヤというロングコートを着用しなければならない。しかし、頭髪を隠すヒジャーブ(スカーフ)は近年、色や被り方等の規制が緩和されている。
男性との交流
家族以外の男性との交流は限定されている。
重要な治療
命にかかわる手術やその進め方についても、男性の親族による署名が必要とされている。
子どもの養育
離婚の場合、女性は男児が7歳、女児が9歳までしか監護が許可されない。
同様に、コンスタンティネスク由紀子・元在サウジアラビア日本大使館書記官は、現地の苦労について吐露している。同国では、外務省と教育省には女性だけが働く建物があると聞いていたが、多くの省庁は男性職員のみが勤務しており、そのような場所では男性用のトイレしかなく、困ったことがあるという。街のサイズが大きいにも拘らず、公共交通機関がなく、治安上の理由から女性が一人でタクシーに乗ることはほぼなく、移動の困難さが女性が行動する上での問題となっていたことも挙げている。また、非イスラム教徒の外国人女性は、ヒジャーブを使用せず頭髪を出している人が多いが、彼女自身は買い物をしているときに「ムタワ」という政府の宗教警察から、数回口頭注意を受けたという経験も話している。
欧米を中心に男女平等や性別ダイバーシティの考え方が強くなる中、企業も高いレベルでのダイバーシティが求められるようになってきている。女性の権利やLGBTの受け止め方については、保守的な国や地域もある中、グローバル大手企業の中には、地域の差を考慮せずダイバーシティを推し進めると公言する企業も少なくない。これまで「文化の違い」と言って片付けてきた複雑な内容にも、企業自身の考え方や方針、説明責任の果たし方が求められるようになってきている。
【参照ページ】Eight things women still can't do in Saudi Arabia
【参照ページ】Saudi Arabia driving ban on women to be lifted
【参照ページ】在サウジアラビア日本大使館 サウジアラビアから現地リポート
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