国際的な気候変動情報開示推進NGOのCDPは10月5日、世界大手化学企業22社の気候変動対応状況をまとめたレポート「Catalyst for change」を発表し、22社のランキングを公表した。対象となった22社の時価総額合計は6,500億米ドル(約73兆円)、年間の二酸化炭素排出量は2億7,600万tで、化学業界全体の排出量の4分の1を占める。CDPの分析によると、化学業界は改善を重ねてはいるが、パリ協定で定めた気温上昇を2℃以内に収めるためには、より早いスピードで製造プロセスを見直す必要があるという。
CDPは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)のガイドラインに沿うように、企業を「移行リスクマネジメント」「物理リスクマネジメント」「移行機会」「気候変動ガバナンス・戦略」の4つの観点から評価。22社は総合ランキングだけでなく、各個別4項目の5段階格付も付けられている。
化学業界22社ランキング
- アクゾノーベル(オランダ)
- DSM(オランダ)
- ジョンソン・マッセイ(英国)
- デュポン(米国)
- BASF(ドイツ)
- 住友化学(日本)
- PPG(米国)
- エボニック(ドイツ)
- ブラスケム(ブラジル)
- LG化学(韓国)
- エア・リキード(フランス)
- 東レ(日本)
- 三菱ケミカルホールディングス(日本)
- 信越化学工業(日本)
- ユミコア(ベルギー)
- プラクスエア(米国)
- ソルベイ(ベルギー)
- リンデグループ(ドイツ)
- エアー・プロダクツ(米国)
- ダウ・ケミカル(米国)
- ライオンデル・バセル(米国)
- 台湾プラスチック(台湾)
(出所)CDP (2017) Catalyst for change
世界首位と2位はアクゾノーベルとDSMのオランダ勢が占めた。気候変動対応のイメージが薄い米国では、複数の企業が下位に甘んじる中、デュポンは4位と健闘。日本勢は住友化学が6位と上位につけたが、東レ、三菱ケミカルホールディングス、信越化学工業は、ブラジルのブラスケムや韓国のLG化学にも及ばなかった。最下位は台湾プラスチック。今年9月2日に合併を完了したデュポンとダウ・ケミカルは、新会社「ダウ・デュポン」で換算すると全体で11位。
化学業界は、世界の産業界全体の二酸化炭素排出量の8分の1を占める。また95%の製造品は化学素材に頼っており、経済面でも非常に重要。現在、化学業界の売上の20%(830億米ドル)は低炭素社会に向けた製品(電気自動車用のバッテリー等)から成っている。また、製造プロセスにおいても毎年2%から5%のエネルギー効率改善がなされている。しかし、より一層の効果を得るためには、環境対応製品だけでなく、プロセスそのものの改善が不可欠だ。
今回は中国企業は対象とならなかったが、中国では2017年末に「中国二酸化炭素排出量取引制度」が開始される予定。それにより、中国企業の二酸化炭素排出量インセンティブは高まり、改善が見られるだろうとCDPは予測している。
【参照ページ】Major chemical companies innovating in low carbon products but failing to meet Paris agreement goals
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