国連責任投資原則(PRI)は10月12日、仏ESG投資コンサルティング大手Novethicと協働で、機関投資家の気候変動対応状況と課題をまとめた報告書「Investor action on climate change」を発表した。報告書では、現状分析把握に当たり、PRIの署名機関(現在約1,200)に毎年報告が義務付けられている報告書をもとにNoventhicが分析した。
気候変動に向けた資産運用対応を開始している機関投資家は、アセットオーナーで74%、運用会社で63%に上った。地域別ではオセアニア地域のアセットオーナーが88%を非常に高く、次いで欧州のアセットオーナーが79%と高かった。とりわけエネルギー転換法173条で気候変動に関する報告が義務化されたフランスは83%と高かった。今回の調査対象は、PRI署名機関のみが対象となっているため、ESG対応のレベルが統計的に高くでやすい傾向にある。それでも、比較のため分析されたその他長期的トレンドへの対応については、テクノロジー開発がアセットオーナー44%、運用会社71%、人口動態の変化がアセットオーナー54%、運用会社71%、資源希少性がアセットオーナー40%、運用会社59%となり、気候変動への関心が高いことが伺えた。
(出所)PRI & Novethic (2017)
気候変動対応の内容では、アセットオーナーは企業に対する気候変動対応の追求が最も高く59%。運用会社は投資意思決定における二酸化炭素排出量データの分析情報の活用が最も高く56%。また、低炭素や気候変動対応投資の重視では、アセットオーナー、運用会社ともに50%以上を高く、昨今のグリーンボンド等のグリーンファイナンス商品への関心が伺える。二酸化炭素排出量の多い企業や化石燃料資源保有企業への投資ポートフォリオ削減も、双方で50%近くにまで上昇してきていることもわかった。一方、アセットアロケーション全体にまで反映させているところは双方ともに20%未満と少なかったが、フランスではこの割合がアセットオーナーで20%、運用会社では31%にまで達していた。
(出所)PRI & Novethic (2017)
気候変動リスクと機会の評価のために活用されている手法では、カーボンフットプリントデータの活用が圧倒的に多く約60%。社内や社外の運用責任者に対するリスクモニタリングの要請も約50%と高かった。気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)ガイドラインが求めるシナリオ分析でも、アセットオーナーのうち23%、運用会社では16%が、シナリオテストを実施していることがわかった。同様にフランスに限ると、カーボンフットプリントデータの活用率は100%、排出量関連リスク削減目標の設定が60%と非常に高く、さらにシナリオテスト実施率も40%に及んでいた。
PRIは今後、投資家の気候変動アクションをさらに支援していく計画。具体的には、TCFDガイドラインの採択、移行リスクマネジメント、シナリオ分析の実施を企業に求める集団的エンゲージメントの展開、優良事例の共有等を含む投資行動の発展、政策決定者への働きかけ、2018年のPRI報告フレームワークにTCFDガイドラインを考慮、以上4つの活動を実施していく。国連環境計画(UNEP FI)、国連グローバル・コンパクト(UNGC)、Portfolio Decarbonization Coalition、CDP、Ceres、IGCC、IIGCC等とも協働していく。
【報告書】Investor action on climate change
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