米国務省は10月12日、国連教育科学文化機関(UNESCO)のイリナ・ボコヴァ事務局長に対し、UNESCOからの脱退し、永久にオブザーバーとしての参加に留まることを決めたと通知した。UNESCO憲章に従い、実際の米国脱退が効力を持つのは2018年12月31日。それまで米国はUNESCO加盟国としての権限・責務を果たす予定。
米国務省は、脱退声明の中で今回の決定の背景について、「UNESCO分担金の支払滞納の膨張」「根本的な組織改革の必要性」と伝えた。米国は前オバマ政権時代の2011年に、パレスチナがUNESCOに正式加盟したことで、分担金の拠出を凍結。以来、米政府の滞納金は5億4,000万米ドル(約600億円)に上っている。米国とUNESCOの関係はぎくしゃくしてきた歴史的な経緯がある。1984年に当時のレーガン政権は、「腐敗があり、東側ではなくソ連寄りの政治的姿勢を感じる」としてUNESCOから脱退。2002年にジョージ・W・ブッシュ政権が再加盟するまで脱退を続けていた。今回の決定でも、国務省のナウアート報道官「ユネスコは反イスラエル的だ」だと言及した。
UNESCOの活動は主に2つ。まず、識字率の向上や義務教育の普及など教育活動に関するもの。教育における男女差別の解消、持続可能な開発のための教育などにも取り組んでいる。もう一つが、文化の保護に関するもので、世界遺産の保護や、文化多様性条約の採択などがある。米国では自国の国立公園制度が活発で、UNESCOの世界遺産登録にはさほど取り組まれていない。2000年以降に新規登録された米国の世界遺産はわずか3つ。
米国務省の発表のわずか数時間後、イスラエルのネタニヤフ首相もUNESCOからの脱退を検討していくと発表。「(米国の脱退は)勇気ある道徳的な決断だ。なぜなら、UNESCOは不条理の劇場と化しており、歴史を保護する替わりに歴史を破壊している」と声明の中で表明した。
【参照ページ】The United States Withdraws From UNESCO
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