ブラジルのミシェル・テメル大統領は8月23日、国立保護区に指定されているアマゾン地区「レンカ(Renca)」を国立保護区の指定から解除し、銅等の鉱物資源の採掘を可能にする大統領令を発した。しかしその後、大規模な反発を受け、事態は混迷を深めている。
レンカ地区は、1984年に国立保護区に指定されたアマパー州とパラー州に跨がる地域。面接約46,000km2で、デンマークの国土を上回る。このうち約3割で資源採掘が可能となる。同地区は鉱物資源が豊富で、ブラジル政府は鉱物採掘を活性化したい考え。レンカ地区は、金、銅、タンタル、鉄鉱石、ニッケル、マンガンの鉱床があると言われており、今回の採掘開放にはすでに国内外の採掘企業20社以上が関心を示しているという。
ブラジル政府は今回の決定について、海外からの投資を促進し、資源の輸出から得られる利益を元手に同国の長期的な経済不況から脱するためだと説明している。同国政府は、開放対象となる地域内にある9つの保全地区と先住民族保護区は今後も法的に保護されるとしているが、アマゾンの活動家らは、過去に発生した大企業による搾取、土地の不法な略奪、鉱山労働者や道路建設業者が及ぼした悪影響を例に挙げ、開放に反発している。世界自然保護基金(WWF)も、森林破壊、土地の強制収奪、先住民権利の侵害、生物多様性破壊、水資源喪失などを伴うと政府の決定を非難している。
これら反発を受け、政府は8月28日に採掘できる地域をより限定し、不法採掘を取り締まる等の新たな大統領令を発したが、甚大な悪影響のリスクは払拭されていない。同国の連邦地方裁判所は8月29日、国立保護区の指定解除は国会による同意が必要だとして大統領令の執行停止を命じた。これに対し、大統領側は控訴する構え。
テメル大統領は、ジルマ・ルセフ前大統領が昨年8月に収賄容疑による弾劾裁判で罷免されて以降、環境保護政策を急速に転換し、農業・鉱業関連の圧力団体の意向を汲むようになっている。テメル大統領自身も今年6月に収賄容疑で起訴された。それを受け、今年8月にはブラジル国会下院が最高裁判所で大統領の罷免裁判を開始する是非を問う採決を行ったが否決。収賄容疑に揺れるテメル大統領が政権を取り続けている。
【参考ページ】Brazil abolishes huge Amazon reserve in 'biggest attack' in 50 years
【参考ページ】Brazil Suspends Amazon Mining Decree in the Face of Criticism
【参考ページ】President Michel Temer of Brazil Is Charged With Corruption
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