ベルギー環境・健康NGOのHEAL(Health and Environment Alliance)は7月27日、石炭・石油・ガス業界への補助金がもたらした市民の健康被害影響を分析した報告書「Hidden Price Tags: How ending fossil fuel subsidies would benefit our health」を発表した。毎年、化石燃料燃焼による大気汚染により、呼吸器疾病、脳卒中、心臓病、肺がん、慢性肺機能障害等で、世界で650万人が寿命を縮めていると報告した。
各国政府は、過去10年近く脱化石燃料を掲げてきたが、依然として、税金が業界への補助金に支払われ続けている。HEALの分析にると、化石燃料に起因する医療費は業界への補助金総額の6倍にもなるという。G20諸侯の合計で、化石燃料補助金額4,440億米ドルに対し、関連医療費で2兆7580億米ドルのコスト負担になっているという。
各国別にみると、例えば英国では、化石燃料によって引き起こされた死に関連する費用は補助金の5倍。つまり、税金65億米ドルが世界で最も裕福な業界の補助金に使われた上に、医療費としてさらに307億米ドルが追加で要している。中国の状況はさらに悪く、化石燃料による大気汚染に起因する医療費は1兆7,900億米ドル、業界への補助金の18倍に上る。中国では大気汚染が原因の早期死亡が年間160万人で、問題は深刻になっている。
報告書では、補助金の用途を転じる方策についても提言をまとめた。例えばドイツでは、年間54億米ドル支払われている化石燃料補助金は、30万世帯に太陽光システムを導入し、さらにドイツ国内で石炭業界に従事する労働者1万5,000人の生活を5年間支えることができる。また、トルコやポーランドなどの国については、補助金ではなく公共政策に税金を使うことの重要性を訴えた。例えばポーランドでは、補助金をやめることで、34の新しい病院を建設し、医者を3万人増やすことができるという。
【参照ページ】World governments make citizens pay billions to destroy their own health
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