京都議定書とは、1997年に京都で開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)で採択された、気候変動への国際的な取り組みを定めた条約です。先進国全体で、先進国の温室効果ガスの排出量を1990年比で5%減少させることを目標として掲げました。
背景
同議定書が採択された背景には、1992年に採択された気候変動枠組条約があります。同条約は、大気中の温室効果ガス濃度を安定化させることを最終目標とし、気候変動による悪影響を防止するための国際的な枠組みを定めています。同条約は、締約国の一般的な義務のみを定めており、具体的な義務は締約国会議(COP)で別条約として規定する仕組みとなっています。
気候変動枠組条約ではその義務を記載する別条約の作成を、1995年にベルリンで開催されたCOP1において、2年後の「COP3で効力のある議定書や法的文書を採択、合意すること」で締約国が同意。翌1996年にジュネーブで開催されたCOP2では、排出目標の設定やその拘束力などについて議論が交わされました。それぞれ「ベルリン・マンデート」、「ジュネーブ閣僚宣言」と言います。そして、1997年に京都で開催されたCOP3で宣言通り、京都議定書が採択されました。
目標
同議定書では、先進国に対し「2008年から2012年の第一約束期間の5年間に、温室効果ガスを少なくとも5%削減する」ことを目標として掲げました。さらに、先進国は各国毎に削減目標を決め、1990年比で、日本は6%、米国は7%、そしてEUは8%と定められました。ここで言う「先進国」とは、気候変動枠組条約の附属書Ⅰ締約国のことを指します。これには、1992年時点のOECD加盟国である先進国とロシア連邦やバルト3国、中・東欧諸国を含む経済移行国が含まれます。
一方、本議定書では発展途上国に対して温室効果ガス排出削減の義務を課しませんでした。その背景には「歴史的に排出してきた責任のある先進国が、最初に削減対策を行うべき」という気候変動枠組条約の合意が反映されたためです。気候変動枠組条約が採択された1992年の国連環境開発会議のリオ宣言に盛り込まれた「共通だが差異ある責任」を体現したとも言えます。一方、先進国が発展途上国で温室効果ガス排出削減の取り組みを共同で実施するクリーン開発メカニズム(CDM)が盛り込まれ、発展途上国も温室効果ガスの排出削減に貢献できる仕組みになっていました。
発効要件と国際交渉の経緯
同議定書の発効要件を次の通りに定めました。
- 55カ国以上の国が締結すること
- 締結した附属書Ⅰ国の1990年の合計温室効果ガス排出量が、全附属書Ⅰ国の合計排出量の55%であること
本議定書は1997年に採択されましたが、詳細ルールを決めるために交渉がなされた2000年のハーグでのCOP6で交渉が決裂。強いルールを求めるEUや発展途上国と、経済影響を懸念する米国や日本、ロシア、カナダなどが対立したためです。2001年3月には、当時ブッシュ政権であった米国が京都議定書からの離脱を表明。発効する前に米国が離脱するという事態に陥りました。米国の離脱理由は、気候変動の科学的不確実性、米国経済の石油依存、途上国の削減義務免除などでした。
その後、2001年7月にボンで再開したCOP6.5で、京都議定書の中核要素についての「ボン合意」がなされ、交渉が再開。2001年10月から11月のマラケシュでのCOP7で、運用ルールの合意として「マラケシュ合意」が締結されました。その後、日本は2002年に批准し、2004年にはロシアも批准。2005年に京都議定書が発効しました。発効時点の批准国数は192カ国でした。
京都メカニズム
京都メカニズムとは、各国内での削減努力に加えて国外での活動や削減量の国家間取引によって温室効果数削減をより容易にするための措置です。クリーン開発メカニズム(CDM)、共同実施(JI)、排出量取引(ET)の3つの措置があります。このうちクリーン開発メカニズムは途上国も参加することのできる制度で、残りの2つは先進国同士によるものです。
第一約束期間後の取り組みについて
京都議定書は、第一約束期間である2008年から2012年の取り組みについてのルールです。そこで同議定書では、2005年から2013年以降の取り組みの検討を開始することが明記されていました。これに基づき、2005年に「京都議定書改正に関する特別作業部会(AWG-KP)」での議論が始まりました。続いて、2007年のCOP13では、削減義務を課されていなかった途上国や京都議定書を批准していない先進国などについても考慮し、2009年末までに包括的な新たなルールを作ることが決められました。それに伴い「長期的協力行動に関する特別作業部会(AWG-LCA)」も設置されました。
しかしその後、COPは紛糾し、2013年以降のルールで合意できない事態に陥ります。ようやくギリギリのタイミングとなった2012年12月にドーハで開催されたCOP16で、京都議定書の改正案が採択され、2013年から2020年までの8年間を第二約束期間とすることや、二酸化炭素排出量を1990年比18%削減すること、温室効果ガスに三ふっ化窒素(NF3)を追加すること等が決まりました。しかし、この議定書改正案は、発効に必要な締約国(192か国)の4分の3(144か国)の批准が必要ですが、今日でも79ヶ国に留まっており、発効していません。また、批准国もほとんどが削減義務を負わない発展途上国で、日本も批准していません。すなわち、気候変動枠組条約は、2013年以降のルールがない状態に陥り、事実上、京都議定書が機能停止に陥りました。
そこで登場したのが、COP21で採択されたパリ協定です。パリ協定は、合意できなかった2013年から2020年までの第二約束期間を一旦脇に置き、2020年以降のルールを固めることに成功しました。パリ協定では、先進国と発展途上国が同様に目標設定することが求められ、世界全体で産業革命前からの世界の平均気温上昇を「2度未満」に抑えることが決まりました。
参考ウェブサイト
- 環境省「気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書」
- 環境省「地球温暖化に関わる国際交渉の経緯」
- 環境省「京都議定書の概要」
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