WEEE指令とは、電気・電子機器廃棄物に関するEU法。2003年2月にRoHS指令とともに公布・施行されました。電気・電子機器を再利用またはリサイクルし、電気・電子機器廃棄物を削減することを目的としています。WEEEとは、Waste of Electrical and Electronic Equipmentの頭文字をとったものです。WEEE指令は2012年7月に改正されています。
背景
WEEE指令ができた背景には、電気・電子機器廃棄物の量の増加があります。EU域内の電気・電子機器廃棄物は、2005年には900万トン、2020年には1,200万トンまで増加すると予測されています。とりわけテレビや冷蔵庫、携帯電話等が特に増えています。
さらに、電気・電子機器廃棄物は有害物質を含有しているため、適切に処理しければ環境や人体に影響が及ぶリスクがあります。また、電気・電子機器に使用されている希少資源を有効活用するという狙いもあります。
概要
本指令は、生産者責任原則に基づき、電気・電子機器廃棄物を製造した加盟国及び生産者対し、その回収やリサイクルシステムの構築、費用負担を義務づけています。
また2012年の改正で、廃棄物の回収率を定めた「WEEE回収目標」が変更されました。新目標は、2016年までに過去3年間に販売された電気・電子機器の年平均重量の45%、2019年までに過去3年間に販売された電気・電子機器の年平均重量の65%もしくはWEEEの総重量の85%となっています。欧州委員会によると、この回収目標は、住民1人当たり約20kgの電気・電子機器廃棄物となります。
対象製品
対象製品は10項目の電気・電子機器です。
- 大型家電
- 小型家電
- IT・通信機器
- 耐久消費財
- 照明機器(フィラメント電球を除く)
- 電気・電子工具(大型固定式産業用工具を除く)
- 玩具・レジャー用機器・スポーツ用機器
- 医療機器(移植された製品、感染の恐れのある製品を除く)
- 監視・制御機器
- 自動販売機
なお、2018年8月15日からは対象商品は以下の6項目の分類に再編され、一部の例外(軍事用機器、宇宙用機器、産業用大型固定工具、大型固定据付機器、輸送機器など)を除く全ての電気・電子機器が対象となります。
- 温度交換装置(冷蔵庫、エアコンなど)
- スクリーン、モニター、および表面積が100cm2を超えるスクリーンがある機器
- 照明機器(フィラメント電球を除く)
- 大型機器
- 小型機器
- 小型IT・通信機器
生産者の義務
WEEE指令は、生産者に対して次の義務を課しています。
- 管轄加盟国当局への登録
- 各生産者の個別または共同スキームへの参加によるWEEE処理システム構築
- 再利用、解体、リカバリーに配慮した製品設計
- 製品の使用者やWEEE処理施設に対する情報提供、及び「ゴミ箱×マーク」の製品への添付
またWEEE指令が定義する「生産者」は「製造者」だけではなく、広義に定義されています。
- EU域内で設立された自社ブランドでEEEを製造・販売する者
- 他のサプライヤーの製品を自社ブランドで再販する者
- EU域内に商業ベースで輸入する者
- インターネットなどを通じてEU域内の一般消費者や他のユーザーに直接販売する目的でEU域内またはEU域外に設立された者
回収状況
2014年時点で、各EU加盟国の回収状況には大きな差が見られました。ノルウェーでは20.9kg、スウェーデンでは14.9kgと高い値を記録した一方、ルーマニアでは住民1人当たり回収量は1.6kgに留まりました。
カテゴリー別にみると、大型家電は170万t回収されています。これは、EU28ヶ国における電気・電子機器廃棄物全体の約47%を占めます。また、小型家電は30.4万tで全体の8%です。IT・通信機器は55万t、耐久消費財は54.2万tでした。
電気・電子機器廃棄物に関連するその他の動向
電気・電子機器が適切に処理されずに、環境汚染や人体に悪影響を及ぼしている状況は、世界中で発生しています。特に発展途上国では、先進国から電気・電子機器廃棄物を輸入していますが、中古品のため寿命が短く最終的には現地で廃棄物になります。発展途上国は廃棄物処理施設が整っていないことが多く、製品に含有する鉛や水銀、カドミウム、ヒ素などの有害物質が環境汚染や健康被害をもたらしています。
廃棄物に関する国際的な枠組みとしては、バーゼル条約等があります。しかし回収率は各国によって大きく異なり、実効性を高めるためには地域特性に応じた綿密な制度設計が必要となります。増え続ける電気・電子機器廃棄物対策のため、国連は国連大学(UNU)を中心とした新たなイニシアチブ「StEP(Solving the E-Waste Problem)」を2007年3月に開始。国連機関、企業、政府、NGO等様々な組織と協力体制を築く取組を実施しています。
参考文献
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