世界的にペットボトルの消費量が急増している。世界全体のペットボトル消費量は10年前は3,000億本だったが、昨年は過去最高の4,800億本。1分で100万本、一秒に換算すると2万本が消費されたことになる。また縦に重ねると地球から月までの距離の半分以上に匹敵する。消費量は2021年には20%増え5,833億本になるという。現在のペットボトル過剰消費は気候変動と並んで深刻な環境問題を引き起こすかもしれないと危惧されている。英紙ガーディアンが報じた。
大量生産・大量消費を促している原因として、中国で伸び続けているペットボトル需要の急増が挙げられている。都市化が進み、水質汚染が深刻な中国ではペットボトルで売られるミネラルウォーターは消費者にとって必需品。これにより中国国内のペットボトル容器消費量だけでも世界の4分の1を占めている。使用後投棄されたペットボトルは毎年500万から1,300万トンものプラスチックゴミとして世界中の海に流入し、魚や海鳥などの海の生態系を脅かす。英事前団体エレン・マッカーサー財団の調査によると、海水中に含まれるプラスチックゴミの重量は2050年には海に生息する魚の重量よりも重くなると推計。またマイクロプラスチックを摂取する魚を食べることによって人間の食物連鎖に害を与えると専門家は警告している。
しかし、なぜプラスチック素材の中でもリサイクル性が高いペットボトルが毎年大量に放棄され、海を汚染しているのか。カギはリサイクル率の引く際にある。2016年に消費されたペットボトルのリサイクル回収率は半分以下。また回収されたうちのわずか7%しか実際にペットボトルとして再利用されていなかった。国際環境NGOグリーンピースが今年3月に公表した調査結果によると、世界6大飲料メーカーは毎年合計200万tのペットボトル飲料水やジュースを販売しているにも関わらず、その平均リサイクル率はわずか6.6%。とりわけコカ・コーラは毎年1,000億本もの使い捨てペットボトルを生産しており、1秒間3,400本に当たる。ガーディアン紙は、大手飲料メーカーがペットボトル再生素材使用率を上げれば、ペットボトルのリサイクル率は進むと見立てた。
実際に、世界大手飲料メーカーは、環境保護団体からの圧力や消費者の環境問題意識の高まりを受け、再生素材の使用率を上げる動きに出てきている。同紙の最近の記事によると、コカ・コーラは急速にペットボトルのリサイクルを増やそうとしているだけでなく、以前は反対していたデポジット制度の採用も検討しているという。デポジット制度とは飲料水などの商品にあらかじめペットボトル容器の「預かり金」込みで販売し、使用後返却の際、消費者に容器代が戻ってくるというシステム。現在廃棄物として扱われているペットボトルに価値を与えることによって、リサイクルの大幅な拡大につなげることができると期待されている。しかし、コカ・コーラは依然ペットボトル使用量に関する情報開示を行っておらず、同社のペットボトルリサイクル推進についてまだ具体的な詳細は明らかになっていない。同社は2020年までに再生ペットボトルの使用量を二倍に引き上げる目標を掲げているが、環境保護団体や専門家の間では十分ではないとの懸念の声もあがっている。
【参考ページ】A million bottles a minute: world's plastic binge 'as dangerous as climate change'
【参考ページ】Coca-Cola to increase amount of recycled plastic in its bottles
【参考ページ】Greenpeace report reveals plastic footprint of world’s largest soft drinks companies
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