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【国際】英王立国際問題研究所、食糧貿易の脆弱性分析報告書を発表。海峡等に大きな脆弱性

 英国王立国際問題研究所(Chatham House)は6月27日、世界の食糧貿易におけるチョークポイント(難所)と脆弱性に関する報告書「Chokepoints and Vulnerabilities in Global Food Trade」を発表した。食糧輸送の主要な通過拠点となっている海峡、運河および沿岸、内陸ルートにおける深刻なリスクに対応する迅速な政策決定と実施を世界中の政府関係者に促している。

 世界の人口が増加している中、食糧の確保は、数種類の作物と肥料の貿易によって支えられている。そのうちトウモロコシ、小麦、米の3品目だけでカロリー摂取量の約60%を占めている。それに次ぐ大豆は、世界最多の65%が家畜等の飼料に用いられ、人間が摂取する動物性タンパク質の供給源となっている。毎年、世界の輸送システムは、膨大な量のトウモロコシ、小麦、米、大豆を輸送し、約28億人の胃袋を賄っている。一方で、毎年、農地に使われる1億8,000万tの肥料は、人口増加を支えるだけの穀物生産量を維持するのに不可欠な役割を果たしている。

 このような重要品目の国際貿易は拡大しており、少数のチョークポイントに大きなプレッシャーがかかってきている。同報告書が警鐘を鳴らすチョークポイントとは、経由する輸送ルート上の重要拠点のことで、非常に多くの輸送船や車両の通過拠点となっている海峡や運河等の海路、そして沿岸と内陸部における穀物輸送用のインフラを指す。これらのチョークポイントは、破壊され通行不能になる可能性があり、1カ所でも通行不能になった場合には、食糧供給量の不足、価格の高騰、食糧市場を超えた波及的な影響等の危機的状況が発生する。また、輸送遅延、輸送中の品目の損傷、輸送コスト増等の原因にもなりうる。

 同報告書は、穀物輸送の通過拠点となっている海路の最重要のチョークポイントとして、西洋とアジアを結ぶパナマ運河とマラッカ海峡を挙げた。マラッカ海峡は、主として中国および東南アジア地域での飼料用として、世界の4分の1以上の大豆輸送の通過点となっている。他にもトルコ海峡は、主として「ブレッド・バスケット」と呼ばれる黒海地方からの小麦が、世界中の小麦輸送量の5分の1を占めている重要な地点。海路のチョークポイントとしては、その他、ジブラルタル海峡、ホルムズ海峡、バブ・エル・マンデブ海峡、ドーバー海峡等が挙げられている。また最重要の内陸部および沿岸部のチョークポイントは、米国、ブラジル、黒海地域にあり、小麦、米、トウモロコシ、大豆の世界輸出量の53%を占めている。

 問題なのは、これらのチョークポイントが3種類の破壊的なリスクにさらされていることだ。一つ目は、気候変動により、嵐や洪水などによりチョークポイントが一時的な閉鎖に追い込まれるリスクや、インフラの摩耗(耐久力低下)およびインフラの分断等による効率低下および脆弱性の加速が起こるリスク。二つ目は、戦争、政治的不安定、海賊行為、紛争、組織犯罪やテロ等。3つ目は、政府機関と反政府組織によるチョークポイントの閉鎖や通過の制限などの制度的な措置。

 このチョークポイントの問題に対処するため、報告書では具体的な対策を推奨した。

  1. チョークポイントに関する分析を主要なリスク管理および安全性に関する計画に統合:例えば政府機関は、国家レベルと地方レベルでのリスク・エクスポージャーと脆弱性を査定する必要がある
  2. 将来的な食糧の確保に向けたインフラへの投資:例えば金融安定理事会(FSB)主導の気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の等のガイドラインに沿った投資の促進
  3. 世界貿易の信頼性と予測可能性の強化:例えば世界貿易機関(WTO)のプロセスを通じた輸出制限範囲の継続的な縮小
  4. 緊急用の供給分配制度とスマートな戦略的食糧貯蔵方法の開発:原油市場において国際エネルギー機関(IEA)が例示しているように、国連食糧農業機関(FAO)、国連世界食糧計画(WFP)、農業省市場情報システム(AMIS)等による新たな貯蔵の仕組みの構築
  5. チョークポイント・リスクに関する根拠の確立:食糧サプライチェーンにおけるリスクの査定に役立てるため、リアルタイムの食糧貿易や食糧インフラ能力に関するデータの収集や分析

 世界の人口増加により、人類の食糧に対する脆弱性は高まってきている。チョークポイント管理の必要性はますます重要となってきた。

【参照ページ】Chokepoints and Vulnerabilities in Global Food Trade
【報告書】Chokepoints and Vulnerabilities in Global Food Trade

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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