金融世界大手英HSBCは7月上旬、パーム油生産のサステナビリティ認証機関RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)に対し、インドネシアで熱帯雨林地域での大規模農地開発を計画しているパーム油企業ノーブル・プランテーションズに対する調査を開始するよう要請した。国際的な主要銀行がRSPOに調査開始を依頼するのは今回が初めて。国際環境NGOEnvironmental Investigation Agency(EIA)やグリーンピースらが展開するキャンペーンが背景にあると見られている。
EIAやグリーンピースは先月、HSBCの他、蘭ING、蘭ABNアムロ、蘭ラボバンクの4行に対し、ノーブル・プランテーションズがインドネシアのパプア州でマンハッタンの3倍もの原始熱帯雨林180km2を伐採する計画を立てている証拠を示す書簡を送付した。Noble Plantationsの親会社である香港の資源・食品商社大手ノーブル・グループは今年3月、新発社債合計7億5,000万米ドル(約840億円)を発行。HSBCとINGが共同ブックランナーを、ABNアムロとラボバンクが共同主幹事を務めた。また、4行ともにRSPOの会員企業にもなっている。その中でもHSBCは今年2月、パーム油業界への融資基準を強化し、森林破壊を引き起こす企業への融資を行わないことを決めていた。HSBC以外の3行は、NGOの書簡に対しすぐに対応をする構えは見せていない。
一方Noble Plantationsはこれまで、農地開発予定区域には原始熱帯雨林は含まれないと説明してきている。実際に、同社は第三者機関を使った環境アセスメントも実施しており、原始熱帯雨林が含まれないという確認も得ている。しかし、RSPOは今年4月、この環境アセスメントを実施した第三者機関が担当した別の案件の審査を「質が低い」と判断し、当該開発案件担当企業に対し開発の停止を命じている。
RSPOは、今回HSBCからの要請を受け調査を開始するとともに、ノーブル・プランテーションズに対し調査完了まで開発を停止するよう求めた。
HSBCが今年2月にパーム油業界融資基準を改定して以降、仏BNPパリバも同様にパーム油関連企業への投融資基準を強化している。アジア地域でもシンガポールのDBSが初めてパーム油関連企業に関する方針を策定した。しかし、多くの銀行は基準の改定には踏み切っていない。銀行はこれまでパーム油生産による環境破壊について具体的なアクションを取ることはなく、常に他の機関による銀行の顧客の行動の監視に頼ってきた。しかし近年、NGOや機関投資家からそれ以上の行動を求める動きが出てきており、HSBCの今回のアクションは顧客に対して直接働きかけを開始した先駆的な事例となりそうだ。
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