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【国際】PRI、格付会社と機関投資家の信用リスク評価とESGの関係を分析したレポート発表

 国連責任投資原則(RPI)は7月5日、ESG要素が信用リスクに与える影響を分析したレポート「Shifting perceptions: ESG, credit risk and ratings」を発表した。PRIは昨年、ESG要素が信用リスクに与える影響を透明にしていく共同声明「Statement of ESG in Credit Ratings」を発表。格付会社と機関投資家の双方が、どのようにESG要素を考慮しているのかの調査を開始し、今回のレポートと発表に至った。

 共同声明には、PRI署名機関である格付会社も参加。格付世界大手であるムーディーズ、S&Pグローバル・レーティングの他、中国の格付け会社である東方金誠国際信用評估(Golden Credit Rating International)、大公国際資信評估(Dagong Global Credit Ratings Group)、中誠信国際信用評估(China Chengxin International Credit Rating)、ブラジルのLiberum Ratings、フランスのBeyond Ratings、ドイツのScope Ratings、マレーシアのRAM Ratingsの9社が、PRIに情報提供を行った。

 同じく欧米を中心とした機関投資家大手も、共同声明に加わり、債券投資における信用リスク評価においてESG要素をどのように考慮しているかの情報提供を行った。参加した企業は、カリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)、チューリッヒ保険、AVIVA Investors、アリアンツ、ナティクシス、Mirova、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント、HSBCグローバル・アセット・マネジメント、BNPパリバ・インベストメント・パートナーズ、カルバート、ERAFP、日興アセットマネジメント、T&Dアセットマネジメント等。

 PRI署名機関の中で、債券投資の際にESGを考慮している機関投資家が大半。とりわけ投資手法の中に仕組み的に組み込んでいると答えた機関投資家の割合が70%から80%にまで達していることがわかった。しかしPRIは、信用リスク評価においてESGが一貫して考慮されていないと指摘。特に、機関投資家が運用会社を介さず行う直接債券投資では、改善の余地が大きいとの見方を示した。


(出所)PRI

 同レポートでは、S&Pグローバル・レーティングの事例も紹介。環境・気候変動リスクはすでに企業信用リスク評価の中に織り込まれてきており、2015年に環境・気候変動リスクが格付において考慮されたものの中で、34%は格付ダウン、14%格付アップをもたらしたという。環境・気候変動リスクが信用リスクに反映される度合いは業種によって異なり、資源エネルギーや電力関連の企業格付に比較的影響が大きいことが伺える。しかしPRIは、全体傾向として債券投資におけるESG投資は株式投資におけるESG投資に比べ大きく遅れていると総括し、信用リスクの中に反映され始めてはいるものの、まだESGリスクの考慮が甘いと指摘した。格付会社側も、どのようにESGリスクを格付に反映させているかについては、より透明性や情報開示を進めていくことが重要だろうとの課題感を示した。また同レポートは、格付会社の国債格付では、まだESGリスクの反映が進んでいないことも匂わせた。

 格付会社と機関投資家の間では、信用リスクを見立てる期間に関する考え方が異なることもわかった。格付会社は、比較的短期に信用リスクを検討し、一般的なものとし、ハイイールド債では2年以下、投資適格債では約5年、国債では10年の信用リスクを算出しようとするのに対し、機関投資家はより長期での信用リスクを検討していた。また、重大なESGリスクの評価対象でも、格付会社は倒産リスクのみを考慮するのに対し、機関投資家は投資リスク全体を視野に入れていた。

 PRIはレポートの中で、格付会社と機関投資家の間のズレを相互のコミュニケーションの中で解消していくことを提言した。

【参照ページ】PRI publishes new report on ESG factors in credit risk analysis
【レポート】Shifting perceptions: ESG, credit risk and ratings
【共同声明】Statement of ESG in Credit Ratings

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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