ドイツ・ハンブルクで開かれた主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)は7月8日、「G20ハンブルク首脳宣言」を採択。気候変動、国連持続可能な開発目標(SDGs)、雇用、租税回避、医療、サプライチェーン等に関する内容が盛り込まれた。
気候変動に関しては、「パリ協定から脱退するとの米国の決定に留意する」と明記する一方、他の19カ国・地域は「パリ協定が不可逆的である旨表明する」と宣言し、米国以外の国々は結束してパリ協定を推進していくことを意思を固めた。さらに19カ国首脳は、「我々は、パリでの結果に沿って緩和及び適応のための行動に関し開発途上国を支援するための財政資源を含む実施手段の提供についての先進国による国連気候変動枠組条約上のコミットメントを達成することの重要性を再確認」した。同時に米国は、「その他の国の自国が決定する貢献におけるエネルギーへのアクセス及びエネルギー安全保障の重要性に鑑み、これらの国々による化石燃料へのよりクリーンで効率的なアクセス及び利用並びに再生可能エネルギー及びその他のクリーン・エネルギー源の普及を支援すべくこれらの国々と緊密に連携するよう努める旨表明する」と、他国の政策には協調する姿勢を示した。会議の記者会見で、仏マクロン大統領は今年12月12日に、再度パリで気候変動に関する首脳会議を開くと発表。パリ協定履行と資金メカニズムがテーマになる。
雇用では、20カ国・地域首脳は「雇用形態がますます多様化していることを認識しつつ、この多様化が社会的保護及び労働条件に与える影響を評価し、新たな技術、人口構成の転換、グローバル化及び変化する労働関係が労働市場に与える影響を含め,地球規模の傾向を引き続き監視する。我々は,労働市場の転換の間のディーセント・ワークの機会を促進する」とディーセント・ワークの重要性に言及。さらに、「労働市場へ若者を統合するための質の高い実習制度を含め、職業教育・訓練の重要な役割を認識」した。
租税回避については、「『共通報告基準(CRS)』に基づく金融口座情報の初回の自動的交換が2017年9月に行われることを期待」するとともに、「全ての関係法域が遅くとも2018年9月までに交換を開始すること」を要求した。これに向け、来年サミットまでに経済協力開発機構(OECD)に対し改善が必要となる法域のリスト作成を要望した。リストに掲載された法域に対しては防御的措置を検討していく。
医療分野では、「WHOによって特定された優先度の高い病原菌及び結核に関するR&Dを促進する重要性」を強調。「既存及び新規の抗微生物剤の基礎及び臨床研究イニシアティブ並びに製品開発の効果を最大化するため,新たな国際的R&D連携ハブ」の創設を求めた。この取組に向けて、全ての関心のある国及びパートナーに対し参加を呼びかけた。
農村部の若者雇用では、アフリカに焦点を当てた「G20農村部の若者雇用のためのイニシアティブ」を創設することを表明。発展途上国の政策に沿い、2022年までに110万人の新たな雇用を創出し、今後5年間に最低500万人の若者に対しイノベーティブな能力開発プログラムを提供していく。また、深刻な飢餓状態にあるソマリア、イエメン、ナイジェリア北東部の人道支援のために、G20加盟国・地域から必要資金の3分の2超が拠出されたことも歓迎した。
持続可能なグローバル・サプライチェーンに関する内容では、「労働、社会及び環境上の基準の実施の促進並びに国連ビジネスと人権に関する指導原則やILOの多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言のような国際的に認識された枠組みに沿った人権の促進にコミットする。OECD多国籍企業行動指針を遵守している国は,同指針を促進することにもコミットし,他国が後に続くことを歓迎する」と、政府が積極的に企業のサプライチェーン改善にコミットすべきだと宣言した。2025年までの児童労働撲滅、現代奴隷の撲滅も明言した。
主に中国で問題となっている過剰生産能力問題では、「杭州サミットによりマンデートを与えられ、OECDにより支援される鉄鋼の過剰生産能力に関するグローバル・フォーラムの構成国に対し、情報共有と協力の強化に関するコミットメントを2017年8月までに達成し、かつ鉄鋼の過剰生産能力を減少させる具体的な政策的解決策を速やかに構築」することを呼びかけた。中国では、鉄鋼の過剰生産により、価格破壊とともに環境汚染の問題も発出しており、中央政府は対策の声を挙げているが、地方政府や国営企業の動きをコントロールできていない状況がつづいている。
【首脳宣言】G20ハンブルク首脳宣言
【首脳宣言】G20 Leaders´ Declaration
【付属文書】G20 Hamburg Climate and Energy Action Plan for Growth
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