世界10ヶ国の機関投資家79社は7月3日、企業に対し従業員管理の情報開示を要求する共同イニシアチブ「Workforce Disclosure Initiative (WDI)」を発足した。ESG投資推進NGOのShareActionの呼びかけに、英シュローダーズ、仏アムンディ、仏ナティクシス、英HSBCアセット・マネジメント、仏アクサ・インベストメント・マネージャーズ、英リーガル・アンド・ゼネラル・インベストメント・マネジメント、蘭APG等、欧州の運用会社大手が多数応じた。参加機関投資家の運用資産総額は8兆米ドル(約900兆円)。同イニシアチブの活動資金は英国際開発省が提供する。
同イニシアチブは、企業の就業規則や労働慣行などを細かくチェックし、同業他社と比べた労働リスクや機会を把握していくというもの。企業に対して同様の質問票を送る負荷を避けるため、WDIが団体として一括して企業に質問票を送付していく。機関投資家が連合して企業の質問票を送付する先例としては、CDPによる気候変動対応に関する質問票送付が有名。WDIの質問票はCDPの「人事・労働版」と言える。
初年度である今年は、パイロット年度(試験年度)と位置づけ、ロンドン証券取引所の大型上場企業50社と他の世界の証券取引所の大手上場企業25社、合計75社に質問票を送付する。質問では、当該企業の先進国、発展途上国の双方の事業活動が対象となる。質問内容には、人事関連のガバナンス、グローバル規模での人員配置と安定性、人材研修、従業員エンゲージメントなど多岐に渡る。質問票の設計では、英国年金基金協会Pensions and Lifetime Savings Association(PLSA)のフレームワークが参照された。同時に国際NGOオックスファムが、調査票送付企業の発展途上国での現地を訪問し、実態把握も展開する。来年以降は質問票を送る対象企業を急速に増やしていく。
ESG投資ではこれまで、環境や社外の人権侵害、労働分野でも強制労働や児童労働、ダイバーシティなど特定分野のみに焦点が当てられていたが、ついに一般的な人事・労働分野にも機関投資家の関心が及んできた。
【参照ページ】$7.9 trillion investor coalition pushes companies for disclosure on global workforces
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