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【インド】政府、児童労働撲滅に向けILO「最低年齢条約」と「最悪の形態の児童労働条約」を批准

 インド政府は6月13日、児童労働撲滅のための主要な国際条約を2つ批准した。1つ目は、1973年に国際労働機関(ILO)が採択した「最低年齢条約(第138号)」および同時採択の補足的勧告「就業の最低年齢に関する勧告(第146号)」。もうひとつは、1999年に同機関が採択した「最悪の形態の児童労働条約(第182号)」。これにより政府は、未成年の雇用に関する国際労働基準を適用し、他国による監査に対する受け入れを容認。政府としてこの問題への取り組みを本格化させた。

 2011年のインドの国勢調査によると、全世界で1億6,800万人いる5歳から14歳の児童労働者のうち、インドには400万人以上が存在していたとされている。しかし児童労働問題の活動家は、さらに数百万人の児童が貧困のため児童労働リスクにさらされていると述べている。バンダルー・ダタトレヤ労働大臣は、今回の批准について、「児童労働のない社会へのコミットメント」の再確認だと表明した。

 先述の児童労働に関する条約2つは、各国が国内法を整備するための基本的な原則を規定している。就業の最低年齢は、義務教育終了年齢後で原則15歳とされているが、軽労働については一定の条件の下に13歳以上15歳未満とされている。また危険有害業務については、18歳未満は禁止されている。しかし発展途上国のための例外措置として、就業最低年齢を14歳に引き下げ、軽労働については12歳以上でも可としている。
 
 また、最悪の形態の児童労働とは、18歳未満の児童による(1)人身売買、武力紛争への強制的徴集を含む強制労働、債務奴隷等のあらゆる形態の奴隷労働またはそれに類似し行為、(2)売春、ポルノ製造、わいせつな演技のための児童の使用、斡旋、提供、(3)薬物の生産、取引等、不正な活動に児童を使用、斡旋または提供すること、(4)児童の健康、安全、道徳を害するおそれのある労働、と定義されている。

 これらの条約を批准すると、各国は4年ごとに進捗状況をレビューする義務を負う。インドの批准が遅れた背景について、児童労働問題の活動家は、政府が同国における児童労働の存在を否定していたため、批准には否定的だったと説明している。今回の決定について、児童の権利擁護の活動家でノーベル賞受賞者のカイラシュ・サティアテイ氏は、大きな転換だと語る。児童労働および最悪の形態の児童労働の存在を政府が認めたことにより、児童に対する予算の増加や、関連団体への強力な法的ツールの提供に繋がるという見解を示した。

 2011年の国勢調査によると、インドの人口12億人のうち、18歳以下が実に40%以上。この比率は世界最多クラスだ。過去20年間の急速な経済発展により、数百万人が貧困から脱した。また、社会福祉制度の導入、未成年者保護や教育確保に関する法律が制定されたことで、児童労働も抑制されてきている。しかし、依然として、世界の3億8,500万人の最も貧しい子供のうち30%以上がインドに住んでいることが、2016年の世界銀行とユニセフの報告で明らかになっている。

 このような子供達は、より良い人生をという誘いに応じて人身売買業者の犠牲者になりやすく、強制労働や債務奴隷状態に陥ってしまう頻度が高い。インドの児童労働者の半数以上が農業に従事しており、4分の1以上が、衣服の刺繍、絨毯織り、マッチ製造業等で雇用されている。また、レストランやホテルに加え個人の家庭での家事労働などにも従事し、女の子の多くは性的な奴隷として売春宿に売られている。従って貧困との闘いが、条約の有効性の鍵になる。

 今回はインドの児童労働について述べてきたが、日本で第138号条約および第146号勧告が批准されたのは2000年6月であり、第182号が批准されたのは2001年6月だ。2015年10月時点での批准国は、前者が168カ国、後者が180カ国となっていた。

【参照ページ】India commits to global pacts on eradicating child slavery
【参照ページ】ILO駐日事務所:児童労働に関するILO条約
【参照ページ】ILO駐日事務所:1999年の最悪の形態の児童労働条約(第182号)
【参照ページ】ILO駐日事務所:1973年の最低年齢条約(第138号)

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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