国際環境NGOのレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)、バンクトラック、シエラクラブ、オイル・チェンジ・インターナショナルの4団体は6月21日、世界主要銀行の化石燃料へ融資状況をまとめた報告書「Fossil Fuel Finance Report Card 2017(化石燃料ファイナンス成績2017)」を発表した。同様のレポートは今年で8回目。当初は「Reportcard on banks and mountaintop removal」という名称だったが、2013年に「Coal Finance Report Card」に改称。さらに2016年から「Fossil Fuel Finance Report Card」という名称となり、石炭だけでなく化石燃料全体にまで分析対象を拡大した。
報告書では、ヨーロッパ、米国、カナダ、日本、中国、オーストラリアに本社を置く主要民間銀行グループ37社の化石燃料に関する方針と融資・債券引受状況をまとめた。今年からは、化石燃料案件への大きな資金提供者である日本のメガバンク3行と中国四大銀行も調査対象に加えられた。また、対象となった化石燃料関連案件は、石炭採掘、石炭火力発電、エクストリームオイル(オイルサンド、北極および超深海の油)、液化天然ガス(LNG)輸出等、環境負荷が高いとされるもの。化石燃料案件への融資および債券引受金額については、オランダ金融調査会社プロフンド(Profundo)のデータを用いている。また報告書では、米国で社会問題となったダコタ・アクセス・パイプライン・プロジェクトなどを踏まえ、プロジェクトの人権侵害についても掘り下げて調査を行った。
報告書によると、石炭採掘については、すでに今回調査対象の37社のうち22社が資金提供を抑制する方針と立てている中、過去3年間で中国の銀行を中心に579億2,000万米ドルが新たに供給されていた。欧米銀行の石炭採掘関連融資残高ではドイツ銀行が首位だった。石炭火力発電では、同じく中国の銀行を中心に、747億1,000万米ドルが新たに供給された。一方、石油の中でも環境悪化の大きいエクストリームオイル(オイルサンド、北極および超深海の油)採掘では、カナダのロイヤル・バンク・オブ・カナダ(RBC)と米JPモルガン・チェースが資金提供を主導していた。報告書は、銀行グループに対し、気候変動因子となっている石炭への資金提供を停めるとともに、エクストリームオイルについて融資方針を制定すべきだと主張している。
報告書は、37社について、石炭採掘、石炭火力発電、エクストリームオイル、LNG輸出の4つそれぞれについてAからFまで格付された。石炭採掘では、AとA-の格付を得た企業はなかったが、続くBを、仏クレディ・アグリコル、仏BPCE/ナティクシス、蘭INGの3社が取得。また石炭火力発電でも、仏BPCE/ナティクシス、蘭INGの2社が調査中最高位のBを取得した。比較的新しく調査対象となったエクストリームオイルとLNG輸出ではB以上を取得した企業はなかった。なかでも、日本のみずほフィナンシャルグループ(みずほFG)、三菱UJFフィナンシャル・グループ(MUFG)、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)の3社は、4つ全てで最低ランク「F」を取得。同様に中国四大銀行である中国工商銀行、中国銀行、中国建設銀行、中国農業銀行も全てで「F」だった。中国と同等に日本のメガバンクが気候変動に配慮できていないことが示される形となった。一方、米バンク・オブ・アメリカ、シティグループ、仏BNPパリバ、独ドイツ銀行グループ、蘭INGなどはすでに石炭採掘への資金提供を段階的に廃止することを決めている。
今回の報告書発表と連動する形で、レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)の日本支部、350.orgジャパン、FoEジャパン、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)の4団体は6月22日、「みずほフィナンシャルグループ2016年ESG評価レポート:独立レビュー」を同社の株主および投資家向けに発表した。同報告書によると、パリ協定後に今回対象となった化石燃料案件への融資額が増加したのはみずほFGだけだという。独立レビューには、みずほFGの投融資方針が他の欧米のものと比較した結果や、同社が関与している具体的なプロジェクトの状況が記載されている。
独立レビューを発表した日本の4団体は、みずほFGの株主に対し、同社へのESG評価・開示や対応ロードマップの作成等を要請するとともに、改善が見られない場合は当社からの投資引揚げ(ダイベストメント)を提言した。
【参照ページ】New Report Reveals Bank Policies Fail to Respond to Climate Risks
【報告書】Fossil Fuel Finance Report Card 2017
【独立レビュー】みずほフィナンシャルグループ2016年ESG評価レポート:独立レビュー
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