国際労働機関(ILO)は5月31日、新たな報告書「占領アラブ地域における労働環境」を発表。パレスチナ労働者の置かれた劣悪な労働環境と緊急支援を世界に発信し、50年に渡るイスラエルのパレスチナ占領によってこの地域の住民が日常的に数多くの苦難に耐えている現状を伝えた。
東エルサレム、ガザ地区、シリアのゴラン高原を含むヨルダン川西岸の地域は「天井のない牢獄」と呼ばれており、今回発表された2017年版のレポートでは、移動と経済活動の厳しい制限、長年に渡る封鎖、和平プロセスの行き詰まりが地域内の状況悪化の決定要因となっていると分析している。ILOのガイ・ライダー総裁は報告書の中で、「パレスチナの労働市場の改善努力の前に立ちはだかる厳しい現状は、占領者がパレスチナ国境及び国土、水、天然資源のアクセスをコントロールしていることの結果だ」と述べている。
経済成長は、ヨルダン川西岸やガザ地区においても見られるが、今回の調査で現地入りしたILO調査団は、所得向上を満たすには十分な成長とは言えず、雇用確保には程遠いとしている。占領アラブ地域の失業は、中東、北アフリカ諸国の2倍となる25%を超え、とりわけ若年層では40%を超える。事態は200万人が暮らすガザでとりわけ緊迫しており、ガザ全体の失業率は40%を上回り、経済活動が可能な若者では60%が失業している。ガザの住民は就労のための移動が禁じられており、大学新卒者の失業が蔓延している。
今回発表された報告書では、ヨルダン川西岸では移動および経済活動の禁止が労働市場を分断し、パレスチナの経済活性化を阻害しているとしている。また、他に選択肢がないことから、パレスチナ人がイスラエル国内やイスラエル入植地に移動する現象も発生しており、同地ではヨルダン川西岸に比べパレスチナ人の所得は2倍だが、厳しい状態や経済的搾取に喘いでいる。とりわけ、パレスチナ人にイスラエル内の仕事を斡旋する業者が、17%の斡旋料をパレスチナ人労働者から徴収する「ブローカー税」が深刻な問題となっている。それでも、イスラエルに移動したいパレスチナ人の数は膨れる一方で、国境周辺には長蛇の列ができ、治安悪化も進んでいる。
報告書では、パレスチナの国家建設を支援する投資が急務だとして、国際的な支援を呼びかけた。
【参照ページ】ILO calls for urgent action to provide decent work for Palestinian workers
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