スイスで5月21日、原子力発電所の順次停止と再生可能エネルギーの促進を内容とする「新エネルギー法」の是非を問う国民投票が行われ、賛成58.2%、反対41.8%の賛成多数で賛成派が勝利した。投票率は42.3%。また、国民投票の採択に必要な過半数の州の賛成でも、19.5州が賛成多数、3.5州が反対多数となり、要件を満たした。
今回賛成派が勝利した新エネルギー法は、政府が進める「エネルギー戦略2050」のもとで、スイスで稼働している原子力発電所5基全ての改修を禁止し、順次稼働停止にしていくとともに、原子力発電所の新設を禁止する内容となっている。スイスで稼働中の原子力発電所は、1969年から1984年の間に稼働を開始し、以降30年以上新設されていない。2011年の福島第一原子力発電所事故により、スイスでも原発反対の声が強くなり、政府は2029年までに原子力発電所を停止させる新エネルギー法案を閣議決定。スイスでは重要政策は国民投票で是非を問うことになっているため、国民投票へと舞台が移った。
2016年11月に行われた国民投票では、既存原発の運転期間を最長45年に制限し、1972年までに運転を開始した3基を2017年までに停止、残り2基も2029年までに停止することを是非が問われ、このときは反対派が54.2%で多数となり否決。投票率は45%だった。しかし政府は、再度国民投票にかける方針を決め、具体的な稼働停止年限は設定しない内容に変更し、今回の国民表での賛成多数可決に至った。
スイスでは現在、発電量の33.5%を原子力発電で賄っている。新エネルギー法は2018年初めに施行される予定で、以降は再生可能エネルギーへと舵を切る。原子力発電5基のうち1基は2019年に閉鎖する予定だが、それ以外の稼働停止の時期は未定。同法では、2020年には1人当たりの原子力発電による平均エネルギー消費量を2000年比で16%削減、2035年までに43%削減することを定めている。また電源構成では、現在も主力の水力発電を2035年までに37.4TWhに拡大し、再生可能エネルギーを2015年時の1.7TWhから、2020年には4.4TWhに、2035年には11.4TWhにまで上げる。それでも不足する分を、天然ガス等の化石燃料発電で補う。これにより、2050年目標の電源構成は、水力55.9%(現在約60%)、再生可能エネルギー30.6%(現在約5%)、化石燃料13.5%(現在約1%)と掲げられた。
政府は、このエネルギー転換のための予算を、国民への電気料金増で補いたい考えを示しており、反対派は、輸入電力への依存、景観の悪化などのデメリットの他、電気料金が4人家族で年間3,200フラン(約36万円)値が上がりすると批判していた。一方、ドリス・ロイトハルト環境・エネルギー相は、電気料金の増加は、4人家族で年間40フラン(約4,500円)に留まると主張していた。
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