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【アメリカ】トランプ大統領、パリ協定からの離脱方針を表明。高まる中国・EUの存在感

 米トランプ大統領は6月1日、ホワイトハウスで、気候変動枠組条約パリ協定からの離脱方針を表明した。トランプ大統領は、パリ協定は米国にとって不公平な内容であり、米国経済を痛めるものであると同協定を批判した。パリ協定には世界190ヶ国以上が署名しており、すでに147ヶ国が批准。米国も前オバマ大統領政権時代の2016年9月3日に批准し、同協定は2016年11月14日発効している。

 パリ協定の大枠の内容は、各国自主的な二酸化炭素排出量削減目標を設定し、それを加盟国間でチェックしあっていくというもの。国の自主的な目標は、「INDC(各国が自主的に決定する約束草案)」という名称がつけられている。各国はこのINDCを気候変動枠組条約事務局に提出しており、米国のINDCは2025年までに1990年比で26%から28%削減するという目標だ。パリ協定から離脱すると、このINDCから解放される。しかし、パリ協定は、そもそも各国が自主的な目標設定を行う仕組みのため、トランプ大統領のいう「不公平な内容」というものが、何を指すのか定かでない。また、米国内にも、不公平であるならば、INDCを設定しなおせばいいだけだという意見もある。

 トランプ大統領は、大統領選挙戦中から、パリ協定からの離脱に言及していたが、当選後には各方面からパリ協定への残留を求める声が上がっていた。政権内でも、前エクソンモービル会長のレックス・ティラーソン国務長官、大統領の長女イヴァンカ・トランプ大統領補佐官が、大統領に残留を進言していたという。経済界からも、主要企業30社のCEOがトランプ大統領に対し、残留を求める共同書簡を送った。トランプ大統領は今回、それらの反対を振り切って、持論であるパリ協定離脱を強行する姿勢だ。

 二酸化炭素排出量世界第2位の米国がパリ協定から離脱し、米国が二酸化炭素排出量削減に努力しないとなれば、気候変動やそれに伴う健康被害、経済活動に及ぼすリスクは大きくなる。トランプ大統領のパリ協定離脱表明の直前に、EUと中国は、米国が離脱するリーダーシップの穴を埋めるべく、協調してパリ協定を支えていく共同声明を発表。両者はパリ協定は「今まで以上に重要な絶対的義務だ」と強調し、今後も気候変動への取組を加速させていくことを宣言した。米国のリーダーシップが不在となる中、EUと中国は接近し、とりわけ中国の国際的な政治的存在感がますます大きくなっていく。

 パリ協定は、加盟国の離脱において、即刻の離脱はできない仕組みになっている。条文の中で、「締約国は、この協定が自国について効力を生じた日から3年を経過した後いつでも、寄託者に対して書面による脱退の通告を行うことにより、この協定から脱退することができる」と定めているためだ。そのため米国は、パリ協定が発効した2016年11月から3年後の2019年11月にしかパリ協定から「合法的に」離脱することができない。また離脱通告後1年は効力が残るため、完全に条約から解放されるのは2020年11月となる。この制約については、トランプ大統領もすでに認識しているようで、米メディアによると、パリ協定の親条約にあたる気候変動枠組条約そのものからの離脱も検討しているという。パリ協定は同じく条文の中で「[気候変動枠組]条約から脱退する締約国は、[パリ]協定からも脱退したものとみなす」と定めているためだ。気候変動枠組条約の離脱手続は1年で完了できる。

 さらに米国国内での離脱プロセスに関する議論もある。パリ協定は条約であり、パリ協定からの離脱について米国議会の承認が必要との声も今後上がりそうだ。だが、米国議会が今回のトランプ大統領の離脱方針表明をどう受け止めるかは未知数。前オバマ大統領は、パリ協定批准に当たり、議会審議にかけずに行政府の判断のみで批准を行う「受諾(Acceptance)」の措置をとった。理由は、批准に必要な上院での3分の2の賛成票が望めないという観測があったためだ。そのため、今回トランプ大統領が上院審議にかけた場合、上院もパリ協定離脱を支持する可能性は低くない。むしろ、上院が「パリ協定への受諾そのものが無効だ」という論調を持ち出し、即刻の離脱を要求する可能性もありそうだ。

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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