G20省エネ・ファイナンス・タスクグループ(Energy Efficiency Finance Task Group:EEFTG)は5月4日、省エネ分野への投資を加速させるための政府政策課題を整理し提言をまとめたレポート「G20 Energy Efficiency Investment Toolkit(G20省エネ投資ツールキット)」を発表。G20加盟各国に対して、喫緊の国際課題である気候変動問題に対処する投資を加速するための制度整備を訴えた。EEFTGは、2009年のG8ラクイラ・サミットで組成された「IPEEC(国際省エネ協力パートナーシップ)」のもと、2015年3月に立ち上がったG20内のタスクグループ。EEFTGは、IPEECが2014年に定めた「G20省エネ・アクションプラン」を複数年単位で実現していくための会議体としての役割を果たしている。
EEFTGの共同議長国はフランスとメキシコ。またEEFTGにはG20のほとんど国が参加しているが、日本、イタリア、ブラジルは参加していない。G20以外ではアルゼンチンが参加している。今回の報告書は、EEFTGの3年間の検討の成果としてまとめられ、EEFTG事務局の他、IPEEC事務局、国連環境計画金融イニシアチブ(UNEP FI)、国際エネルギー機関(IEA)も作成に加わった。
同レポートの中でIEAは、G20諸国の経済では、建設、産業、輸送のエネルギー効率改善に、毎年2,210億米ドル(約25兆円)以上が投資されており、そのうち建設分野が半分を占めていると報告。国連環境計画金融イニシアチブ(UNEP FI)は、銀行、機関投資家、保険会社のそれぞれの分野の資金を省エネに投じていくための提言部分を担当し、G20諸国政府が自発的に参照すべき4つの内容をまとめた。
- 業種や地域毎の省エネ投資の現状の評価
- G20諸国の省エネ投資に関する制度設計の優良事例を紹介。2015年に制定された「自発的省エネ投資原則(Voluntary Energy Efficiency Investment Principles)の導入国事例の紹介
- 民間の省エネ投資に資する優良な金融商品事例を紹介
- 国際開発金融機関や政府系金融機関が果たすべき役割を紹介
同レポートは、省エネ分野向け民間投資について、「Core」「Integrated」「Inefficient」の3つに分けて議論を展開している。Coreとは、再生可能エネルギー向けの投融資などエネルギー効率改善に直接資するもの。Integratedは、直接的な投資ではないが、投融資の中で国際的なエネルギー効率改善を考慮しているもの。レポートは世界全体の投融資のうち、Coreは数%、Integratedが約30%と試算。エネルギー効率が考慮されていない残りの60%を「Inefficient」と呼び、これを課題として捉えている。
省エネ民間投資の分野では、UNEP FIの主導で、機関投資家向けの「G20 Energy Efficient Investor Statement(G20省エネ投資家声明)」と銀行向けの「G20 Bank Statement on Energy Efficiency(G20省エネ銀行声明)」への署名を呼びかけている。G20省エネ投資家声明には、CalSTRS、AP1、AP2、AP3、AP4、AP6、アムンディ、Mirova、AVIVA Investors、AXA Investment Managersなど39の機関投資家(総運用資産額4兆米ドル)が署名。G20省エネ銀行声明には、BNPパリバ、INGグループ、ABNアムロ、クレディ・アグリコル、中国工商銀行など42ヶ国122行(総資産額110兆ドル)が署名している。日本勢については、日本政府がEEFTGに参加していないためか、三井住友トラスト・ホールディングスが「G20省エネ銀行声明」に署名しているのみ。
【参照ページ】G20 ENERGY EFFICIENCY INVESTMENT TOOLKIT HIGHLIGHTS US$ 221 BILLION INVESTMENT OPPORTUNITIES
【報告書】G20 Energy Efficiency Investment Toolkit
【原則】G20 Voluntary Energy Efficiency Investment Principles
【参照ページ】G20 ENERGY EFFICIENCY INVESTOR STATEMENT
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