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【環境】フランスのエマニュエル・マクロン新大統領のエネルギー・環境政策の骨子

【環境】フランスのエマニュエル・マクロン新大統領のエネルギー・環境政策の骨子 1

 5月7日のフランス大統領選挙で勝利を収めたエマニュエル・マクロン元経済・産業・デジタル大臣。来る5月14日に第25代フランス大統領に就任します。

 フランスでは、社会党を与党とする現オランド大統領政権時代に、環境・エネルギー政策の大転換がありました。その最たる例が2015年7月22日に制定された「エネルギー転換法」。この法律では、フランスの電力の代名詞であった原子力発電所の大幅削減、化石燃料消費量の廃止、再生可能エネルギーへのシフト、石油由来廃棄物の大幅削減、企業及び金融機関に対する気候変動関連情報開示制度など、世界初の政策を大規模に盛り込みました。同時に政府の公的年金でもESG投資が大規模の推進されました。これまで欧州の環境先進国と言えば、ドイツやイギリス、または北欧という印象が強かった近年。フランスは後塵を拝していましたが、このオランド政権時代に、欧州、そして世界の「トップクラス」へと躍進しました。

 その中、関心が集まるのが、マクロン新大統領のエネルギー・環境政策です。マクロン新大統領は今回、無党派として立候補し、極右と言われる国民戦線のマリーヌ・ル・ペン候補だけでなく、フランス二大政党である社会党のブノワ・アモン候補、共和党のフランソワ・フィヨン候補とも選挙戦を競いました。選挙戦中には、現政権与党の社会党幹部が、自党の候補ではなく、マクロン新大統領を支持するという事態も発生しました。なぜマクロン氏には社会党の支持が集まっているのか。その背景には、マクロン新大統領の経歴が関係しています。

 マクロン新大統領は、2004年にフランスの名門大学、国立行政学院(ENA)を卒業後、フランス財務省に就職。国家官僚として勤務する一方、政治家を志し、社会党へ入党します。その後、2008年に財務省から、英国老舗資本家であるロスチャイルド家の中核投資銀行であるロチルド&Cie銀行に転職。投資銀行家としてのキャリアを積みつつ、2010年には社会党を離党し、無党派として政治家を目指す姿勢に転向します。マクロン氏が、最初に政権入りするのが、2012年。当時就任したばかりのオランド大統領に招聘され、大統領府副事務総長としてオランド大統領に側近の地位を得ます。そして2014年、オランド政権の経済・産業・デジタル大臣に任命された後、今回の大統領選挙出馬を視野に2016年8月に大臣を辞任。そして、39歳の若さで大統領選挙に勝利。このように、マクロン新大統領は、無党派ながらも現オランド政権を支えてきました。マクロン氏は、2010年に社会党を離党した背景について、「私は社会主義者ではない」とし、右派・左派を超越した政治を目指したい考えを訴えています。

 さて、このマクロン新大統領の環境・エネルギー政策はどう展開されていくでしょうか。マクロン新大統領は、選挙期間中に、すでに自身の「環境・エネルギー政策」の骨子を表明しています。大きな柱は、現オランド政権のエネルギー・環境政策を「さらに推し進める」というものになっています。

電力

  • 2025年までに原子力発電比率を2025年までに現在の67%から50%に削減
  • 国営電力会社EDFが業績が大幅に低下している原子力発電産業会社アレヴァを救済合併
  • 2022年までに石炭火力発電を全て廃止
  • フランス領内での石油・ガス採掘を全て禁止
  • 2030年までにエネルギー消費に占める再生可能エネルギー割合を現在の約15%から32%に引き上げ
  • 2030年までに発電量に占める再生可能エネルギー割合を現在の約18%から40%に引き上げ
  • 再生可能エネルギーと環境保全分野に150億ユーロ(約1.8兆円)を投資
  • 再生可能エネルギー発電の設備容量を26GW分を新たに追加

交通燃料

  • ガソリンとともにディーゼル燃料に対する増税を実施し、石油燃料の消費を抑制
  • 2040年までに化石燃料自動車を廃止する将来構想を提示
  • 電気自動車向けの充電スタンド設置に対する政府支援

エネルギー効率

  • 不動産分野のエネルギー効率改善のため、低所得家庭に対し40億ユーロ、政府施設に対し40億ユーロを助成
  • 農業分野の環境改善と地域農業協働促進のため50億ユーロを助成
  • 輸送分野のエネルギー効率改善のため、50億ユーロを助成
  • EUの排出権取引制度に対し、フランス国内では下限価格を設定する意向を表明(2020年までに1t当たり56ユーロ、2023年までに100ユーロ)

 再生可能エネルギー推進では、すでにEUからの助成が決定しています。大統領選挙の前の5月10日、EUの行政府である欧州委員会が、再生可能エネルギー発電所建設プロジェクト合計17GW分に対する約13億ユーロ(約1,600億円)の助成金給付を承認しました。そのうち、15GW分は陸上小型風力発電所(最大3MWで6基以内)。残りは、小型太陽光発電所(100kW以内)が2.1GWと、下水発生ガスを用いた廃ガス火力発電所が1ヶ所です。

 マクロン新大統領はこれらの野心的な政策を実現できるのか。それは今後の国会運営にかかっています。無党派で出馬したマクロン新大統領は、現在国会内に1議席も有していません。マクロン氏は当選後、支持団体をもとに新政党「レピュブリック・アン・マルシェ(共和国前進)」を設立。6月11日から18日に行われる国民議会(下院、定数577)選挙に向け、428人の公認候補を発表しました。社会党の下院議員24人もマクロン新党公認候補として出馬します。一方、半数以上の候補が新人候補であり、選挙戦は容易ではありません。マクロン新大統領は、従来の政党には依存しない政権運営を目指すため既存の政治との訣別を掲げ、有権者に支持を訴えています。

 マクロン新大統領が打ち上げたエネルギー・環境政策が花開くか。次の下院選挙が帰趨を決します。

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夫馬 賢治

株式ニューラル 代表取締役社長

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