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【イギリス】Ergon、英国現代奴隷法の企業報告状況報告書発表。改善の余地が大きいと総括

 英国デューデリジェンス・コンサルティングErgon Associatesは4月1日、2017年3月の時点で企業150社が「ビジネスと人権リソースセンター(BHRRC)」に登録した英国現代奴隷に関する報告書の分析結果を発表した。2015年10月に英国現代奴隷法(Modern Slavery Act)が制定されてから2回目の報告書。報告書は、企業の報告の質は改善しつつあると一定の評価をしつつも、同法が求める水準には程遠いと厳しい見方を示した。

企業が同法に基づいて、どのように現代奴隷を特定し、取り組んでいるかについて検討している。

報告書サマリー

  • 昨年と同様、今回も法令に遵守していない状況が見受けられた。21%の報告書が取締役または同等の役職者による明確な署名がなかった。また、25%はホームページから直接閲覧できなかった。
  • 全体傾向として文章量は多くなり、記述も詳細になった。特に、構造、業務、サプライチェーン、方針について報告の質が上がった。
  • 最も報告内容が充実しているのは多国籍大企業。
  • デューデリジェンスのプロセスと結果に関する報告は概ね向上していなかった。58%はリスクアセスメントについて最低限の報告に留まり、アセスメントに基づく行動について優先順位を特定していなかった。
  • サプライチェーンに関しては比較的カバーされているが、労働者派遣業、アウトソーシング業、建設下請業等、強制労働が横行している領域については情報の質のばらつきが大きかった。
  • 現代奴隷に関するリスク対策を講じた事例を開示したのは11%のみ。80%はKPIやステークホルダーとの協働に関する記述がなかった。

現代奴隷法に基づく情報開示の現状

分析対象の組織

 「現代奴隷法」は、世界全域で年間3,600万ポンド以上の売上高があり、英国内で事業の全て、または一部を行っている商業組織を対象としている。この規定により、英国外に本社がある、または法人登記を行っている企業もその範疇に入る。

企業の所在地

 分析を行った企業の内、英国内本社がある企業73%、欧州企業の英国子会社7%。北米およびヨーロッパに本社がある企業が各5%。現代奴隷法は英国で事業を展開している英国外企業にも報告を求めているが、海外企業の報告義務度合いや報告の内容に関するガイドラインが不明確。報告不履行での罰則等も不明確。

業界

 報告実施企業の業界割合は、小売業が13%で最も多く、法律・会計等の専門サービスが11%、交通・建設が10%、ITと金融が各9%ずつ、食品加工・食品製造が6%、不動産と工業生産が各5%ずつ、教育・ヘルスケアが4%。

企業規模

 報告実施企業の業界別割合は、世界全体での売上高が5億ポンド以上が36%、5億ポンドから1億ポンドが34%、1億ポンドから3,600万ポンドが20%、3,600万ポンド未満と法令の対象外だが自主的に報告した企業が9%。

可視性

 報告書は企業のHPの目立つ場所にリンクを貼ることが求められているが、遵守している企業は71%。25%はHP以外の別サイトに掲載。

経営陣の署名

 報告書は、CEO、取締役等の署名が必須だが、今回の分析ではCEOによる署名が34%、取締役によるものが31%、役員会のメンバーまたはパートナーによるものが15%だった。昨年同様に21%の報告書には署名がなく、法令が順守されていない。

報告の情報量

 1,000語以上は22%で、昨年の10%から倍増。1,000から500語は45%、500語未満が28%、250語未満が5%。報告書の中では売上高1億ポンド以上の企業は、奴隷制に関する多くの活動や影響があり報告内容が多いはずだと指摘している。

業務上の関係

 直接雇用に関しては、約48%が適切な詳細報告がなされていたが、12%は全く記述がなく、約40%は最低限の情報が記述されているのみだった。一方、サプライチェーン上の雇用に関しては、81%が適切な詳細報告がなされていた。しかし下請を含む契約業者に関しては、16%のみが適切な詳細報告を実施しており、50%以上は全く記述がなかった。下請については改善余地が大きいと指摘した。

報告の質

 報告内容の質について合格点に達している割合は、「組織の構造、事業およびサプライチェーン」67%、「企業の方針」57%、「リスクアセスメント」13%、「リスクに基づく優先順位の特定」17%、「モニタリング・監査」18%、「リスクの緩和または低減のための行動」 10%、「KPI」9%、「トレーニング」35%、「ステークホルダーによる、あるいは共同的な取り組み」17%。

【報告書】Modern slavery statements: One year on
【機関サイト】Ergon Associates

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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