環境省は4月18日、同省が策定してきた「環境報告ガイドライン」の改定に乗り出すことを発表した。環境報告ガイドラインは、環境報告書作成機運の高まりや、後のCSR報告書の屋台骨となるガイドラインとして活用されることを目指し、環境省が2003年に制定。しかし、その後、国際的なガイドラインである「GRI」が日本国内で浸透するにつれ、存在感が薄れていた。同省は、2012年に環境報告ガイドラインを最後の改定したが、今回は抜本的な見直しを行うとして論点整理を行った。
今顔の論点整理は、2016年11月に同省内に立ち上げられた「環境報告ガイドライン及び環境会計ガイドライン改定に向けた研究会」がまとめた。研究会名にもあるように、今回の改定作業は、環境報告ガイドラインだけでなく、2002年に制定し、2005年以降改定が行われていない「環境会計ガイドライン」も対象となっている。研究会委員は、上妻義直・上智大学教授が座長を務め、後藤敏彦・サステナビリティ日本フォーラム代表理事、沢味健司・サステナビリティ情報審査協会会長を含めた3名で構成。環境省は、今後3年をかけて、段階的に環境報告ガイドライン及び環境会計ガイドラインの改定を行う予定。
論点整理でまとめられた改定の方向性では、環境省が行うガイドラインの作成では「環境分野のみを対象とする」としつつも、昨今ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の流れが強くなっていることを受け、ガイドラインも環境だけでなく、ESG全体をカバーするものにしたいとの意気込みも匂わせた。論点整理では、ESG分野のうち、環境部分は環境報告ガイドラインを、ガバナンス部分は金融庁が管轄する「コーポレートガバナンス・コード」を位置づけ、社会部分については、関係省庁を含め新たに「社会報告ガイドライン」を作り出していくことが念頭に置かれた。
とりわけ、社会分野の報告については、国際ガイドラインとなっている「GRI」が要求する開示水準を、中小企業等が活用するのは「容易ではない」とし、簡素化した社会報告のあり方を模索したいとしている。また、情報開示に関する対象範囲(バウンダリー)についても、現行の環境報告ガイドラインの不明瞭な規定により、「開示可能なグループ企業まで含めればいい」というような認識も生まれているとし、今回の改定では、連結対象法人までを必須とするのか、バリューチェーン上の法人の位置づけをどうするのかなどを明確にしていく。
GRIや国際統合報告フレームワークなど国際ガイドラインとの位置づけについては、グローバルに事業を行う大手企業等は国際ガイドラインを遵守することが重要であるとしつつ、中小企業向けには負担を減らすため簡素な「日本版ガイドライン」が必要となるとの考えを見せた。
一方、それでもやはり、簡素化した「日本版ガイドライン」が本当に必要なのかという疑問もある。昨今世界的な趨勢では、国際ガイドラインをあらゆる組織が遵守していくことを目指す考え方が強い。中小企業であれ、大企業のバリューチェーン上にある以上、大企業の情報開示がする上で、中小企業の情報開示体制の構築は欠かせない。また、企業規模を問わず上場企業であれば、日本の金融市場のグローバル化やESG投資の観点から、国際ガイドライン水準の開示が推奨される。環境省は「日本版ガイドライン」が必要な理由についての丁寧な説明が求められる。
【参照ページ】「環境報告ガイドライン及び環境会計ガイドライン改定に向けた論点整理」の公表について
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