米環境保護庁(EPA)のスコット・プルイット長官は、クロルピリホスの農薬利用禁止に関する嘆願書を退ける行政文書に署名した。クロルピリホスは毒性があり、人体や生態系への影響が懸念されている物質。日本では稲や野菜の残留農薬に上限基準値を設定し過剰使用を抑制している。またシックハウス症候群の原因物質にもなることから、国土交通省は2003年に建築基準法を改正し、居室を有する建築物へのクロルピリホスを含んだ建材の使用を禁止している。
クロルピリホスは、EPAが1965年に登録した殺虫剤で、農業用、家庭用、工業用として広く使用されていたが、EPAは2000年に農薬を除く殺虫剤での使用と居室を有する建築物建材での使用を禁止。それでも、農薬使用に関しても市民社会から懸念の声が出続けており、EPAは、前オバマ政権時代の2015年10月、Natural Resources Defense Council(自然資源防衛協議会)とPesticide Action Network North America(北米農薬行動ネットワーク)から嘆願書を受け取り、農薬に使用されるクロルピリホス残留許容量基準を廃止し、農薬使用の全面禁止を起案していた。
しかし、EPAが起案の根拠とした疫学研究の計測手法に対して専門家から疑問が上がり、改めて信頼性の高い手法で計測をしたところ、EPAの根拠とは異なる結果が得られていた。米農務省(USDA)、全米州農業局協会(National Association of State Departments of Agriculture)、連邦殺虫剤殺菌剤殺鼠剤法(FIFRA)に基づく科学諮問委員会(Scientific Advisory Panel、SAP)も同様にEPAの起案に対して懸念を表明していた。SAPは連邦諮問委員会法(Federal Advisory Committee Act)の下、1996年の食品品質保護法の改定に際しFIFRA下に創設された。SAPの主な役割は、農薬や農薬関連の事柄が健康や環境に及ぼす影響を把握し、EPA長官が規制検討する際に適切な提言を行うことにある。
プルイット長官は、今回の決定について、「人体や環境を保護しつつ、クロルピリホスに依存する米国農家数千人に対し規制の確定性を提供する必要がある。」「世界で最も広く普及している農薬を禁止しようとした前政権の動きを巻き戻し、結果ありきの議論ではなく意思決定科学に基づく判断に我々は回帰する」と述べている。
【参照ページ】EPA Administrator Pruitt Denies Petition to Ban Widely Used Pesticide
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