米トランプ大統領は3月28日、環境保護庁(EPA)に対し、前オバマ政権時代に制定された米国気候変動政策の要であった「クリーンパワープラン」の見直しを命ずる大統領令に署名した。トランプ大統領は、昨年の大統領選挙期間中から、「クリーンパワープラン」の緩和または廃止を行うという政策を表明しており、いよいよ具体的な手続きに入ることとなった。
「クリーンパワープラン」の正式名称は、「Carbon Pollution Emission Guidelines for Existing Stationary Sources: Electric Utility Generating Units(既存固定発生源(発電ユニット)の炭素汚染排出ガイドライン)」。環境保護庁(EPA)は、前オバマ政権時代の2015年8月3日に、大気浄化法(Clean Air Act)に基づき、「クリーンパワープラン」の導入を最終決定し、同年10月23日の官報に掲載、発効していた。「クリーンパワープラン」は、2030年までに発電所からの二酸化炭素排出量を2005年比で32%削減(削減量8億7,000万t)することを定めており、各州政府に対し実施計画を策定することを義務化していた。また、二酸化硫黄の排出量を90%、窒素酸化物の排出量を72%削減することも定められており、硫黄酸化物や窒素酸化物の排出が多い石炭火力発電が最大の槍玉に上がっていた。
クリーンパワープランについては、米連邦最高裁判所が2016年2月、コロンビア特別区連邦控訴裁判所での法的結着が着くまで、「クリーンパワープラン」の執行を保留する判決を5対4で下している。その後、コロンビア特別区連邦控訴裁判所での審理手続きが停滞しているが、前オバマ政権は同プランの実施を継続していた。トランプ大統領は、コロンビア特別区連邦控訴裁判所での最終判断を待たずして、同プランの見直しに着手する。
トランプ大統領が署名した大統領令には、「クリーンパワープラン」の廃止を含む見直し作業の即刻着手、同プランと同時に定められた「固定排出源(発電ユニット)の新設、改良、再建からの温室効果ガス排出のためのパフォーマンス基準」の廃止を含む見直し作業の即刻着手、検討中の「Federal Plan Requirements for Greenhouse Gas Emissions From Electric Utility Generating Units Constructed on or Before January 8, 2014; Model Trading Rules; Amendments to Framework Regulations; Proposed Rule」の廃止を含む見直し作業の即刻着手が含まれる。また、EPAが発表していた「Legal Memorandum Accompanying Clean Power Plan for Certain Issues」についても廃止を含む見直し作業の即刻着手を命令した。これにより、実質的に「クリーンパワープラン」は廃止されるとともに、発電所に課していた気候変動対策関連の義務内容が撤廃されることになる。
トランプ大統領は、「クリーンパワープラン」の見直し着手の理由について、雇用創出、エネルギー安全保障の強化、不要な環境規制による経済的負荷などを挙げている。
【参照ページ】EPA to Review the Clean Power Plan Under President Trump’s Executive Order
【大統領令】Presidential Executive Order on Promoting Energy Independence and Economic Growth
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